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『MEGザモンスター』感想/観たいものが詰まったサメ狂のための映画

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https://eiga.com/movie/86214/

 

未知の深海で生き延びていた太古の巨大ザメ「メガロドン」に襲われる人々のサバイバルを描いた海洋パニックアクション。「エクスペンダブルズ」「ワイルド・スピード」シリーズなどでおなじみの人気アクション俳優ジェイソン・ステイサムが主演し、「ナショナル・トレジャー」シリーズのジョン・タートルトーブ監督がメガホンをとった。人類未踏とされるマリアナ海溝をさらに超える深海が発見され、沖合に海洋研究所を構えた探査チームが最新の潜水艇で調査に乗り出す。幻想的な未知の生物が生きる深海の世界を発見し、心躍らせる一同だったが、その時、巨大な「何か」が襲いかかってくる。レスキューダイバーのジョナス・テイラーは、深海で身動きがとれなくなった探査チームの救助に向かうが、そこで200万年前に絶滅したとされる、体長23メートル、体重20トンにも及ぶ巨大ザメのメガロドンに遭遇する。

 

メガロドンが出世しました。
広く浅い、深いことなんて何もない、『ジョーズ』『オープン・ウォーター』『ディープ・ブルー』さえ押えれば正統サメ映画は語れるとまでファンに言わせるこのサメ映画という業界で、メガロドンといえば奥の手。とりあえずメガロドン。しかもなぜか主役にはしてもらえない。
(私はB級映画が好きなので、サメ映画は上記三作以外も大好きです。A級ではないものの、B級としてS級な作品もいっぱいあります。でもサメ映画にバカ映画(褒めてる)が多いのも事実です。制作陣も「バカだなー」と思いながら本気で作ってるバカ映画が大好きです。)

代アニの生徒でももっとうまく作れるだろ、みたいなCGで作られる違和感たっぷりのメガロドン(異様にでかいか異様に小さいかのどちらかで適正サイズで表されることはほぼありません)がもはや醍醐味、これを待ってた、みたいな気持ちにすらなりますが、ようやくガチスタッフとガチ俳優のもとでガチメガロドンとして映像化された本作。
メガロドンがようやく日の目を見たような、ようやく主役としてサメ映画に出してもらえたことに、予告映像を見ながら震えました。

そして本作、サメ狂がみたいものが全て詰まった映画になってる。本当に。本当にちゃんとみたいものが限界まで詰め込まれています。深海も研究施設もビーチパニックも沖で舟が襲われるのもド派手アクションもステイサムもぜんぶ詰まってるんですよ。

 

(以下ネタバレを含みます)

 

 

サメ映画のテンプレが全部つまってるサメ狂のための映画

舞台は中国の研究施設。海の中までガラス張りになった近未来的なおしゃれ施設です。
もちろんサメに壊されます。(正確にはガラスが)
もう施設のデザインを見た時に「これはサメにガラスを壊されるための施設だな」と思ってしまうくらいにおあつらえ向きな施設。
少女が振り向いた瞬間に、クソバカでかいサメがこちらを見ているシーンには、もうホラー映画の様相を呈しています。『ジュラシックワールド炎の王国』もそうですが、モンスター映画って結局ホラー映画でないといけないんだよね。めちゃくちゃこわい。
そしてガラスに残された巨大な歯型に感じる「始まった」感

研究施設が舞台ではありますが、他にもポイントは押さえています。
深海で潜水艦に乗っていたら巨大サメに襲われたり、サメゲージに入っていたらサメにどつきまわされたり(最近だと『水深47m』にもあるようによくある設定ですね)、沖に船を出していたらサメに襲われて船が転覆して何人か食われたり、沖で若い男女が泳いでたらサメに襲われたり、さらにちゃんと一般観光客向けのビーチパニックまで用意されています。
とりあえず、よくあるサメ映画の設定あるあるは一通り網羅しています。
その時点でだいぶ満足。

さらにそこから、メガロドンを殺して「ばんざーい!」ってしてたらそれをしのぐさらなるメガロドンが現れて一気に事態が悪くなったり(ちなみに小さいほうのメガロドンの死体を大きいメガロドンが食ったので、私は脳内でプレデターvsアルティメット・プレデターを思い起こしていました)(このさらにデカいのが現れて、それまで苦戦してた敵がやられてしまうシーンは、さらなる「絶望」を人間に感じさせるので、ぜひモンスター映画ではやってもらいたい手法ですよね)(乱発したらクソです)、船に高速で引っ張られて水上スキー状態のステイサムをかみかみしようとメガロドンが追いかけてくるシーンのスリリングさであったり、犬がヤバくなったり、色々と見たいものが詰まっていました。

さらに2人ほど仲間を助けるために自分が死にます。
冒頭の潜水艦のシーンで、ステイサムが救助艇で助けにきたところ、自分まで避難していては船が両方ともやられてしまうと思って、妻への手紙を仲間のポケットに押し込んで自分ひとりだけ潜水艦に残って死んだトシ(眼鏡小太り日本人)は作中イチイケメンでした。

ちなみに犬は死にません
最近は動物愛護団体の関係で犬は殺しにくいので(猫は死体だけなら出るし、鳥などはなぜか平気で死にます)。
頭にリボンをつけた弱弱しくてかわいいヨークシャテリアのピピンちゃんだけは絶対に作中で死んではならない存在です。

人間の命は犬の命より軽いので人間はまあまあ死にます。
メガロドンからしたらおつまみにもならない気がするんだけど。シャチとかホオジロザメ食べてた方がよくない?という気もする。

 

モンスターはどっちだ!ステイサムvsメガロドン


本作のウリといえばなんといってもあのステイサム。
いくらなんでも作中でホオジロザメを「小さいサメよ」とあらわすような世界観の本作で、いくらなんでも巨大鮫・メガロドンとステイサムが戦うなんてね、いくらなんでも爆弾とか銃とかでしか戦わないよね……残念だけど……と思ったら
素手で戦う!!!

ステイサムvsメガロドン、もはやモンスターはどっちだ対決。

もちろん爆弾や銃などを利用した、高予算映画に相応しいド派手アクション(すごいCGが爆発してる)もあり、USJのアトラクションかな?と思うような、小さなグラインダーのようなもので海底の岩場を縦横無尽に追いかけっこするシーンなど、迫力満点。
これは4DXで見るべき映画だと思います。

途中でメガロドンをおびきよせるため沖に船で出て、ヒロインの中国人美女がサメゲージの中に入って水中にもぐります。ここでもちろんメガロドンが襲ってきてケージが壊れる……とおもったら、むしろ壊れずにゲージごと丸のみしようとする!
これは従来のホオジロザメ映画ではできない荒業です。かみ砕かれることなくメガロドンの中に檻ごと飲み込まれていく恐怖。巨大ザメならではのワンシーンでした。
酸素が薄くなり、対サメゲージのため女ひとりの力では壊せないため脱出できず、ゆっくり飲まれていく。
さらにここでその呑まれていくシーンを、サメの内側(女性の視点)から映している。どんどん口の中に入っていって、歯が遠のいて、口が閉まっていこうとする。派手アクション映画のわりに、ここのシーンをゲージがどんどん壊れていく「動」の恐怖ではなく呑み込まれていく「静」の恐怖で描こうとした点には、緩急がついていて非常に良かった。

呑みこまれていく人間をモンスターの内部から描く、つまり生きたまま飲み込まれていく生々しい恐怖とグロテスクさを表す演出は、『アナコンダ』シリーズに顕著です。私は幼少期に『アナコンダ』でこの演出を見たとき、まだいまほどCGが発達しておらずおそらく特撮の技術を使って撮影していたのだと思いますが、体の芯から震えるような、捕食される生の本能を感じました。私がモンスター映画で大好きな演出です。
これをメガロドン映画でやっただけでもう私的には100点です。

そしてこのヒロインの危機を救うのはステイサムですが、なんと、なんの装備もなしに普通に海に飛び込む!
普通の人間であればなんの役にも立たないシーンですが、ステイサムであるというだけで「ああもう大丈夫だ」と安心する観客たち。
よく考えたら23メートルのサメのいる海に2メートルもない素手の人間が飛び込んでいって安堵するって意味がわかりませんが、ステイサムだからいいんです。

そしてステイサムはその後もメガロドン相手に戦いますが、ラストシーンのとどめを刺すところはなんと「素手」。
素手メガロドンと戦って勝つ人類なんてステイサムくらいだよ。

最期に死んだメガロドンがゆっくりと落ちていって、小さなサメたちに群がられ餌食にされるシーンにはちょっと切なくなる。自然は弱肉強食ではなく全肉全食だから仕方ないんだけどね。クジラだって海底にしずんで小魚たちの餌になるし、ライオンだって腐って土の栄養分になるし。
ジュラシックワールド』もそうですが、なんか人間のエゴで「モンスター」にされた動物たちが無残に殺されていくのは悲しい。
せめて深海の下の深海にまだ残っているメガロドンは幸せに暮らしてくれ。世紀の大発見だとは思いますが、こんなこと公表したら世界中の人間たちが新しい深海をいっぱい探索して破壊しつくしてしまうから公表はしないのかな、と思ったり。

まあメガロドンにしても、「なんか新しい道あるやんけ!」ってお散歩に出かけてたらとんでもねえ人間にぶっ殺されたのはびっくりでしょうな……

でも犬は死にません。

 

悪人がいなくてストレスがない


これは大きい。
一応スポンサーの男がちょっと色々めんどくさい男で金儲けとか損得のことを考えてはいるけど、そんな死ぬほど悪いことをしたわけじゃない。自分で先にメガロドン頃嘔吐しただけだし。
彼がクジラの内臓と体液にまみれたままメガロドンに食われるほど悪いことをしたようにも思えない。
『オデッセイ』もそうですが、仲間内で足を引っ張ったり邪魔をしてきたりするやつがいないストレスフリーさはすさまじい。
この「悪人がいなくてストレスがいない」という点は、長所としてもっとアピールすべきと思うんだけど。しないのかな。

 

シンプルに中国人ヒロインがかわいい


普段欧米人の激しい喜怒哀楽を見ている身としては、中国人ヒロインの無表情や静の演技がすごく心地好くて、そしてすごく新鮮で個性的な女性に見える。
ステイサムが「俺が食われたら胸が痛むか」と聞いたときにヒロインが「ちょっと」と指をするシーンがあるのですが、生還したステイサムに向けたこの無表情の「ちょっと」ポーズがめちゃくちゃかわいい。そして新鮮。
欧米人に比べれば感情の抑揚が少ないアジア人ヒロイン、めちゃくちゃかわいくないですか?中国美女が大好きなのでもっと中国人ヒロイン出してほしい。中国語の発音もかわいいよう。

 

そんな『MEGザモンスター』、サメ好きにはたまらないポイントをいくつもおさえた、見たいものが詰まったサメ映画です。多少バカなのがサメ映画のいいところ。
犬は死なないのでよかった。

 

 

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