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映画『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』感想/ゴジラに思い入れのない人間が観たらコンテンツの可能性を感じた

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(画像:https://eiga.com/movie/88330/

日本が生んだ怪獣王ゴジラをハリウッドが映画化した「GODZILLA ゴジラ」(2014)のシリーズ第2作。前作から5年後の世界を舞台に、モスララドンキングギドラなど続々と復活する神話時代の怪獣たちとゴジラが、世界の覇権をかけて戦いを繰り広げる。また、それによって引き起こされる世界の破滅を阻止しようと、未確認生物特務機関「モナーク」に属する人々が奮闘する姿を描く。(上記同サイトよりあらすじを引用抜粋)

godzilla-movie.jp

 

私子どもの頃仮面ライダーになりたかったし今もモンスターが大好き。なんだけどゴジラに思い入れがない。ゴジラキングコングが戦ってるのをむかーし観た、気が、する、、程度。はっきりと観た!と覚えているのはシン・ゴジラくらい。しかもそれも庵野だから観たという理由で、その程度のうす~~~い知識の女がゴジラを観たという話をします。

結論から言うと、ゴジラ好きたちのアツい感想をみて「爆裂最高」を期待してしまい、普通に最高だったのに「まあまあかな……」みたいなきもちになってしまったので、向き不向きがある映画だし「爆裂最高」を期待するともしかするとあなたには合わないかもしれないから、私と同じ轍を踏まないでほしい、ゴジラは悪くないんだ、という話です。あとこきおろしたりしないし普通に良かったんですよ、マジで。あとゴジラというコンテンツの可能性について触れています。

 

とにかく人間ドラマがない。

ちょっと人間パートが長くなるとちゃんと怪獣たちが大暴れして西日本くらいの規模なら2~3分で蹴散らして壊滅してくれるので最高。ストレスフリー。前情報として「人間パートが秒で終わる」と聞いていたけど開始早々秒で終わったので思わず映画館で「生き急ぎすぎだろ!!!」と叫びそうになった。エマ(お母さん)は最初の登場シーンで、知識がなくとも映画好きの血がピーンときたのか「この人やべぇもの開発してそうだな」と思ったんですけど、それが想像の100000倍ヤバい代物でひっくり返りました。全体的に人間がヤバい

何がヤバいって芹沢博士さんが比較的まともに見えるくらい大真面目にクレイジーな論を展開するヤツしかいない。ぼーっとしてると「ふんふんなるほどね」って思いそうになるけど、よく考えたら怪獣を起こして世界の均衡を保とうとするのとか、それに最初は反対しつつも「ゴジラはセーフ」という謎理論で魚雷で闘魂注入するのとか、その魚雷を芹沢さんが生身で設置するとか言い出すのとか、それを押し問答するシーンがほぼなくみんな「仕方ない……」みたいになるのとか(全然仕方なくない気がする)、エマが子供の見てる前で容赦なく数万数十万の一般人を犠牲にして怪獣をめざめさせるのとか、神話をハイテク科学より重要視してるのとか、思ったより神話関係なさげだったのとか、なんかもう皆やべぇんですよね。私はそれが愉快で仕方なかったのでゲラゲラ見てました。実質コメディだなって。この知能低めな感じが映画とうまくあっていて最高のバカ映画になってたと思います(めちゃくちゃ褒めてます)(『アクアマン』も『モータルエンジン』も大好きです)

とにかく人間の命も街も紙屑以下に吹き飛びまくるのが最高。マジで紙屑以下。超死ぬ。超死ぬし超壊れる。最近『空母いぶき』を見て人命に敏感になっていたので、これ損害が復興どころじゃねーべや……というリアルな気持ちがちょっと出てきてしまったのですが、そのリアルな感情のギアをぶっこわすくらい超死ぬし超壊れる。あとたまに食われる。人間なんてギドラからしたら柿ピーにもならない気がするのですが、(食料目的かはわからんけど)パクッといかれちゃってたのが「怪獣って人食うんだ……なおのことコワ……」と異文化を垣間見た気持ちになりました(怪獣知識ゼロなので)。特に戦闘機から脱出しようとしたらパクッといかれたのがトラウマ並みに恐怖だったんですけどあれなんであんなさらっと流されてんの?こわくね?アナコンダが吐き出した人間が消化されかけつつもまだ生きてたというシーンくらいトラウマになりそうなんすけど……怪獣界隈ではポピュラーな食い方なんですかね?人間踊り食い的な……コワ……

 

一方でモスラさんが目覚めたときの讃美歌流れそうな神々しいシーン、あれは虫がゲロ吐くほど苦手な私でも「う、うつくしいんちゃうか……」と思ったし、あれはたしかに昔彼らが神としてあがめられたのもわかるなぁというシーンで象徴的でした。モスラちゃんとゴジラがラブラブなの初知りで「異種交配!?」って驚いたのですが、ゴジラを守るために懸命に戦うモスラちゃんの姿が健気で可愛くて、生きててほしかったな~~~~っておもた、、、ほんまに、、、

 

とにかくこの映画は人間ドラマはすがすがしいほどの「おまけ」として割り切っていて、怪獣のバトルがメイン。もう怪獣!怪獣!怪獣!ソイヤ!ソイヤ!ファ~~(讃美歌)~~~って感じで、いくらゴジラに思い入れがない私とはいえゴジラのテーマがかかって彼が目覚めたときは「うお~~~~!」ってなったし、ゴジラのテーマのアレンジがエグイくらいカッケェだったし、ちょっと念仏?般若心経??が混ざった音楽のときは邪悪さ禍々しさがたちこめていて圧倒された。最高。最高だったんだ。

子供に対する監視ゆるすぎだろ、とか、色々突っ込もうと思えば突っ込めるのですが、この作品はいい意味で「勢い!!パワー!!!!カッコイイ!!!!ドン!」って感じなのでそこを突っ込むのは野暮のような気がする。ロジカルなミステリーじゃあるまいし、というか。ここで不完全なバカっぽさが映画自体を勢いとパワーあるものにしている、と、思う。たぶん。

 

何が私は楽しめなかったかというと、わたし自身が非常に細かい点がきになってしまうというところと、そもそも怪獣バトルに心惹かれなかったというのがあります。怪獣バトルに全振りの映画なのでそこが好きじゃなかったらそもそもたのしめないよな~当たり前体操~。アクション映画とかモンスター映画は好きなのでそういう意味では楽しめたのですが、私は様々なクリーチャーによる都市破壊の様を見たいのであって、モンスター同士のプロレスに魅力は感じなかったのだなと。私の期待していたゴジラは前者であって、この作品は後者。単純にそこが合致しなかった。それは当たり前にこの作品は全く悪くないし、私も普通に楽しめたので十分よかったと思う!爆裂最高にならなかったのだけ、自分の趣味が違うせいで~~と悔しい。

結局そこにあるのはゴジラの多様性ではないかなと思った。

シン・ゴジラは異色のゴジラ映画であると思うけど、私はものすごく楽しめた。それはゴジラに現実で直面したとき、政府や民間がどう動くのかという政治映画にも近いテイストが非常に趣味にあったから。このシンゴジも楽しめるかは人それぞれだし、「楽しめる人」と「楽しめない人」がいるといういわば偏ったフェチの映画を作ってもコンテンツが成り立つくらい、ゴジラというコンテンツには絶対にぶれない主軸があって、その上で様々な多様性が存在しているんだなと。これってファンからしたらとんでもなく贅沢なことなのでは?私は残念ながらゴジラのファンではないのでよくわからないのだけど、ものすごくゴジラファンがうらやましいなと思った。ぶれないくらいの主軸が、つまりそれ単体で十分なコンテンツ力を持つ推しってちょ~~最高ジャン。

今回のKOMも、あらゆるファンの理想を適度にカバーしつつ無難に……というひよった映画をつくろうとしていたら、たぶんわたしは楽しめたけど、楽しめても楽しみ切れない人が物凄く生まれたと思う。

何かを捨てて何かに専念する、そういう映画をつくる決断をするのはすごく難しいし、作り手にそれを委ねることができるゴジラさんのコンテンツ力はものすごい。国民的ヒーローになってもよいんじゃないだろうか。

私は残念ながらゴジラを楽しみまくれはしないタイプの人間だったけど、そういう人間が出てくることはむしろ、消費者のあらゆるニーズの受容の可能性を浮き彫りにするし、ゴジラにはそういう可能性があるんじゃないかな~と思うと、それを好きなファンが羨ましくなりました。という感想です。