現金満タン、ハイオクで。

サブカルチャーがだいすき。ツイッターの延長なので詳しくはツイッターを見てくれ。

このブログについて(及び記事カテゴリーの一覧)

 

はじめに

スマホ版ではaboutページや記事一覧が表示されないらしい、ということに気づいたので、スマホ向けのページを作りました。

みんなどうしてるんだろうか?とググったら、なんか未来設定で記事書いて上に固定して対処してるっぽい人が多かったので、その先人の知恵をパクっていこうと思います。

 

当初はツイッターの延長で、フォロワーの人くらいにしか読まれないだろうと想定して何の自己紹介もなくエントリを書いていたのですが、予想外にはてブロランキングなどから所謂俳優オタクや2..5のオタクじゃない人にも読んでいただけたようで、もう少しちゃんと書かないと怪しいなと思い、今に至ります。

aboutページにはたいしたことは書いていないのですが、一応ものすごく薄い人間性を頑張って引き延ばした自己紹介及びブログの紹介をします。(自意識過剰なので「ブログ」という言葉を使うことすら恥ずかしいです)

はてブロに慣れていないので、何か使い方を間違えていたら早めに指摘してください。

 

 

◆紹介◆

ただのオタク。

BUN太 (@bunbun9922S) | Twitter

(↑現在メインで使っているツイッターアカウントです)

ツイッターの延長でブログを書いているので、自分の守備範囲ではないところつまりオタクじゃない人に読まれる覚悟をしていませんでした。自分の恥部を見られたようで恥ずかしいです。

現在何かと世間様でも話題の刀ミュことミュージカル刀剣乱舞が好き(2019年現在)(追記:2020年現在、呪っています)で、あとルルーシュが好きです。

 

日常・アカウント

BUN太 (@bunbun9922a) | Twitter

映画や音楽や食ったものの話をする

ぶんちゃん (@bunbun9922game) | Twitter

今はほぼ動いていない二次創作アカウント

@bunbun9922

ドラマの男同士に気が狂いがちのアカウント

@bunbun9922ST

他にも色々アカウントがあり、とにかくツイッターばかりしている。

 

pixiv

「BUN太」のプロフィール - pixiv

短めの文章はnoteに上げています。

BUN太|note

 

もし何か問題等あった場合、一番上に挙げたメインアカウントのDM(開放設定)にご連絡いただけたらと思います。

ブログ名については、穂村弘が好きだったので、なんとなく穂村弘の短歌に出てきそうな感じの単語を考えてつけました。なのであえてレギュラーではなくハイオクにしたほうがそれっぽいかなと思ったのですが分かりません。「ハイオク満タン、現金で」をひっくり返してちょっと日常のなかにパラレルワールドはあるんだよ的な意味合いも込めたかったのですが本当に1mmも深い意味がありません。

あとこんなブログタイトルですが自動車免許持ってません。

(追記)とります。

(追記2)とりました。ペーパーです。

 

 

◆記事カテゴリーの一覧◆

・アニメ

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・雑記

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(随時追記予定)

 

 

 

 

 

2022年6月に観た映画の話をする

おは6月。すでに猛暑やないか。

 

 

『流浪の月』

ある日の夕方、雨の公園でびしょ濡れになっていた10歳の少女・家内更紗に、19歳の大学生・佐伯文が傘をさしかける。伯母に引き取られて暮らす更紗は家に帰りたがらず、文は彼女を自宅に連れて帰る。更紗はそのまま2カ月を文の部屋で過ごし、やがて文は更紗を誘拐した罪で逮捕される。“被害女児”とその“加害者”という烙印を背負って生きることとなった更紗と文は、事件から15年後に再会するが……。

流浪の月 : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

映画『流浪の月』 公式サイト

ロリコンの悲哀をこんなに丁寧に描けるの、クジラックス以外にいたんだな……(カスの感想)

 

インターネットで色々難癖をつけられることの多い広瀬すずですが、『怒り』を10代で演じ切った姿を見て以来わたしは役者としての彼女がとても好き。そんなわけで再びの李相日監督と広瀬すずということで非常に期待しながら観に行った本作。結果としては予想以上にとても良い。良い!!
やはり広瀬すず、同年代の女優の中で頭ひとつとびぬけているのではないかと思うくらいの気合入った演技。にしても李監督ほんとうに広瀬すずのこういう演技、好きだな。

広瀬すずの演技の何が良いかと言われたら、ふとした瞬間の「目」。よく「泣き叫ぶ演技は誰にでもできる」と言われるけれど、実際に派手な演技というのはおそらく比較的演じやすくて(美形のイラストは描きやすいからブスを上手に描ける漫画家はマジで上手いと言われるような感じ?)反面日常的な演技は凄く難しいと思う。本作の広瀬すずの表情はとても良い。特に目。怯え、惑い、疑い、信頼、安堵、恐怖、哀切、あらゆる感情を目の揺らぎでオーバーにならずに表現しきってる。ほんまええ役者や、、、、(上からぶんた)

同じく、松坂桃李をはじめとして本作に出演する俳優陣は上記のようにみんな「目」がいい。ガンギマってる。若干狂気ですらある。

一瞬しか出てこない柄本明内田也哉子も「この人じゃないといけない」と思わせる存在感で良い味を出していた。ミスキャストの対極のような映画。正解の音!!

さらに内田也哉子が母親役なのも妙に生々しくてリアル。こういった「毒親」的な役は華奢美人な母親として描かれることが多いけど、骨太でがっしりとしていて絶対に曲げない芯のありそうな、それでいて何を考えているか分からない爬虫類のような目をする内田也哉子を母親にするのが妙に生々しい。一瞬しか出演しないのに本質的恐怖を覚えさせるのでとんでもなく凄い。

 

ここで妙な生々しさの話をしたけれど、本作は本当に映画として「上手」で、脚本の設定や言い回しが繊細でこまやか。そして全てが温度感のあるリアリティを保持している。例えばバイト先の店長なんかも、非常にリアルな程度の善人具合。

こまやかな描き方で私の好きなシーンが、幼少期のさらさの座り方。まるで小鳥がその場しのぎの止まり木に宿るように、ハイチェアに腰かけてアイスを食べるさらさの、頼りないのに生命感のあるあどけなさがとても好きだった。

 

またその店長の台詞で「本当に心配している人もいる」というのがあって、それに主人公さらさの「人は見たいようにものを見る」という台詞が呼応する。

この物語をうつくしくとらえるのもまた我々の「好きに見ている」だけであって、(たしかにラブストーリーではなくともある種の「愛」の物語であるけども)2人の関係を生理的に拒絶する世間の反応というのも当たり前の話。

本作の感想で「何も知らない外野の心無い声が真実の2人の愛を妨げる!無責任な世間め!」のような熱の入ったツイートを散見したけれど、でも世間の反応が正常であるのも事実で、2人の間にある愛は2人にとってすら共通のものではなくてさらさとふみで全然捉え方も見え方も違ってくるものだと思う。そもそも真実なんてどこにもないのだから、さらさとふみのまなざしに乗っかって世間を「愚か」だと批判するのもまた身勝手な立場だよなとも思う。

内田也哉子もやべー親として描かれているしまあ恐らくやべー親ではあるんだけど、世間からすれば「ロリコン性犯罪者(仮)」の息子を衣食住与えながら軟禁する親ってすごくまともで有難いんじゃないだろうか。

 

さてカスの感想に立ち戻りますが、私は概念ロリコン殺生丸のせいだよ)が好きなので本作のふみがめ~~~~~ちゃくちゃラブでした!かわゆ!

そんでこんなに丁寧にロリコンの悲哀を描けるのはクジラックス以外に存在しえないと思ってました。ロリを描くのが上手な作家は数多いけれど、ロリコンを描くのが上手な作家はクジラックスのほかいない。『ろりともだち』、純文学である。

 

なんてカスな感想を抱きつつ、本当に映画として良作でした!!

 

ニューオーダー

裕福な娘マリアンは夢にまで見た結婚パーティの日を迎え、幸せの絶頂にいた。彼女が暮らす豪邸には、結婚を祝うため政財界の名士たちが集まってくる。そんな中、近所の通りで行われていた貧富の差に対する抗議運動が暴動化し、マリアンの家も暴徒たちに襲撃されてしまう。殺戮と略奪が繰り広げられ、パーティは一転して地獄絵図と化す。マリアンは運良く難を逃れたものの、次に彼女を待ち受けていたのは軍部による武力鎮圧と戒厳令だった。

ニューオーダー : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

映画『ニューオーダー』公式サイト|6月4日公開

マジで最悪!!ディストピアスリラー。

オスカーでもアカデミーでもなくヴェネツィア国際映画祭で銀獅子なのが「め、めちゃくちゃわかる~~~」になる映画。個人的には2022年上半期いちばんの胸糞。

先月観たオールドボーイもかなりイヤな映画だったけど、オールドボーイが快楽を伴う「嫌」であるのに対して、本作はずっと不快な「嫌」。不快であることが売りなのでそれで正解なんだけど、ずっと「い、いやだな………………」と思いながら進むので、まあ、嫌だね。嫌なのが、良かったんだけども。

例えるなら「汚いパージ」。いやパージはそもそも汚いけど……。

 

恐らくありえないディストピアを描いているとは思うけど、メキシコならマジであるのでは?と思ってしまうし、どこまでが「現実の延長線」でどこからが「フィクション」なのかが分からないほど、メキシコの最悪な面をベースにしてどんどん最悪なことをないまぜにしてヘドロのようにうねる映画。エログロを必要最低限しか使用せずに渦巻く狂気と混乱を濁流のように強く表現しきっている。圧倒的な技巧。

ヘドロの濁流、あるいは汚物の侵食、世界の崩壊。
あのラストシーンからの無音のエンドロールの凄みといったら、鳥肌がたって背筋が冷たさに襲われる最高のフィナーレ。ぜひあのエンドロールを食らってほしいから、映画館で観てほしい。

 

緑の象徴する意味が分からなかったので、理解するとまたひとつ面白さが増しそう。

 

『きさらぎ駅』

2004年、「はすみ」と名乗る女性が、この世に存在しない「きさらぎ駅」にたどり着いた体験をネット掲示板にリアルタイムで投稿していたが、突然書き込みが止まったことで様々な憶測を呼び、現代版「神隠し」として話題となった。それから十数年後。大学で民俗学を学んでいる堤春奈は、「きさらぎ駅」を卒業論文の題材に選ぶ。投稿者「はすみ」の正体が葉山純子という女性だと突き止めた春奈は、調査の末にようやく彼女と連絡を取ることに成功するが……。

きさらぎ駅 : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

映画「きさらぎ駅」公式サイ

一般の人が観たら本作を「くだらね~」と言うだろうし、我々のような種類のオタクが観たら「最高」と言う。そういう映画。

前提として2ちゃんの超有名都市伝説『きさらぎ駅』である必要性は正直感じず、きさらぎ駅の名前を拝借しただけで、異世界でさえあれば代替可能な世界観。それゆえマジのきさらぎ駅を期待して見に来た人からすれば納得のゆかない気持ちも十分に理解できるけれど、冒頭の草原で私は「当たり」を確信しました。

おそらく制作側も自覚して描かれている「代替可能なきさらぎ駅」。ヘイトを向けられることを承知の上で、それでも別個のエンタメを提供しようときちんと成立させていると思いました。

本番は中盤以降なので、席を立たないでほしい。中盤以降から「やった~~~~~!!!!」となる展開。私は真事故物件や黄龍のどんでん返し(?)でニッコリ大笑顔になったクチなので……。(ここで冒頭の感想に戻ります)

あと女と女の巨大感情がチラ見えしてかなり良い。オタクは巨大感情が好き。

それにしてもヤバ彼氏が全てのヘイトを一身に背負ってくれるのでストレスが少ない。あからさまなかませ犬、助かる。

 

(ちょっぴりネタバレ)

・最近流行の「暴力に容赦ない一般人女性(※本来戦闘要員ではなかった)」、ほんまに好き

・きさらぎ駅は1人ずつ入れ替えシステムのようだけど(伝承の七人ミサキをなんとなく連想した。正確なシステムは違うけど)、2週目の暴力性をもってして、全員生還ルートも今後あるかも!?見てみたいな。全員でヤバ彼氏やヤバおじさんをタコ殴りにしてほしい。

 

 

『オフィサー・アンド・スパイ』

1894年、ユダヤ系のフランス陸軍大尉ドレフュスが、ドイツに軍事機密を漏洩したスパイ容疑で終身刑を言い渡された。対敵情報活動を率いるピカール中佐はドレフュスの無実を示す証拠を発見し上官に対処を迫るが、隠蔽を図ろうとする上層部から左遷を命じられてしまう。ピカールは作家ゾラらに支援を求め、腐敗した権力や反ユダヤ勢力との過酷な闘いに身を投じていく。

オフィサー・アンド・スパイ : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

映画『オフィサー・アンド・スパイ』公式サイト

私は「ある程度アルコールが入った状態で、人の少ないレイトショーに向かい、あえて小難しそうな映画を選んで、うとうとしたり起きたりしながら結局あんまり内容を覚えていない映画体験」をめちゃくちゃオツだと思っているので、そのために観た映画。

アルコールがある程度入ってふわふわした脳みそでぼんやり見つめるスクリーン。「いつでも寝られる」空間でもてあそぶ適度な睡魔の心地よさ。鼓膜に届く異国の言語は知らない子守唄のようで、それでも「ああ~観ないとな~」と思いながら下がった思考力でおぼつかなく辿る脚本。ほんとうに何もかもが心地好くて、最高なんですよね…………。(保身のために野暮を承知であえて注意書きを足しますが、当たり前にそれなりの正常な思考力がある状態でしかいかないので、いびきかいて寝たりとか酒臭くてやばいとかそういうのはないですよ)

そんな24歳で見つけた最高の酒の楽しみ方のために、もとから少し気になっていた本作を見て、ふつうに面白かったです。知識が足りずに決闘のくだりはマジで意味が分からなかったのですが、こういった政治闘争系の映画にありがちな「小難しすぎる」ということもなく、実際にあったノンフィクションをほどよい塩梅でフィクションのエンタメ化して一般大衆にも分かりやすくした映画だったと思います。
ただそのように中盤まで中だるみもなく面白かっただけに、終盤が若干尻すぼみなのが残念。裁判のシーンももっと見ごたえがあればなお最高だった。

 

クリーチャーズ 宇宙から来た食人族』

ある時、宇宙を救うパワーを秘めた小動物型エイリアン「マンピー」が小型宇宙船に乗って地球に飛来。それを追って邪悪な肉食エイリアン軍団も巨大円盤型UFOに乗って地球にやってくる。彼らにたまたま遭遇した、イギリスの田舎の天文台に研究旅行に訪れていた大学生たちは、肉食エイリアンとその手先となったゾンビたちから地球を救うため、決死の戦いを繰り広げることになる。

クリーチャーズ 宇宙から来た食人族 : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

映画『クリーチャーズ 宇宙から来た食人族』公式サイト

普段ジャンル映画は観ますが、かなり久々に「ストレートなB級映画を観たぞ!!」という気持ちにさせてくれる映画!!

『イットカムズアットナイト』を「ゾンビの出ないゾンビ映画」と呼んだのは記憶に新しいが(名作だけど精神が削られるから二度と見たくないね)、本作は「サメの出ないサメ映画」。そう、概念としてのサメ映画。

粗いCG、ちぐはぐな脚本、意味わからん展開、雑なロケーション、全体に漂うチープさ。本作に宿るのはサメ映画の精神。そしてこっちは概念サメ映画が観たいのだから、そのためにTOCANA配給と聞いて予告を見てワクワクして公開初日にチケットを握りしめて劇場に走ったのだから、正解なのだ。これで正解なのだ。この全体的なチープさがとにかくたまらない。しかもマンピーは予想以上に可愛い。勝ってしまいましたね、また、賭けに……。TOCANA!これからもよろしくな!!以上です。

ちなみに一般の人※は本作をZ級と呼びたがるかもしれないが、私は呼ばない。なぜならば私は真のz級……ジュラシックシャークを知っているから……モノホンのZ級の浅さを絶対に舐めないでほしい…………

※重ね重ね恐縮ですが、わかりやすく表現するために「一般の人」と言っています。「ふつうの世間」「世論」「平均値」的な意味です。決してジャンル映画を観てるオレカッケー的な自意識により発せられているわけではないです。マジで勘弁してください。

 

『PLAN 75』

75歳以上が自ら生死を選択できる制度が施行された近未来の日本を舞台に、その制度に翻弄される人々の行く末を描く。少子高齢化が一層進んだ近い将来の日本。満75歳から生死の選択権を与える制度「プラン75」が国会で可決・施行され、当初は様々な議論を呼んだものの、超高齢化社会の問題解決策として世間に受け入れらた。夫と死別し、ひとり静かに暮らす78歳の角谷ミチは、ホテルの客室清掃員として働いていたが、ある日突然、高齢を理由に解雇されてしまう。住む場所も失いそうになった彼女は、「プラン75」の申請を検討し始める。一方、市役所の「プラン75」申請窓口で働くヒロムや、死を選んだお年寄りにその日が来るまでサポートするコールセンタースタッフの瑶子らは、「プラン75」という制度の在り方に疑問を抱くようになる。

PLAN 75 : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

映画『PLAN 75』オフィシャルサイト 2022年6/17公開

希望はないが絶望もなく、ただただ淡々と進む日常に仄暗さを落とす映画。

このときツイッターで流行っていた「なにひとつ良いことが起きない映画」タグを想起しましたが、でも本当に絶望も希望もないので、この表現があっているかどうか。最後にほんの僅かな希望のようなものは見えるけど、おそらく世界はこの先も大きく良くなることも悪くなることもなく、ただ穏やかに緩やかに流れてゆくだけなのだろうなと感じさせる雰囲気が、非常に生々しくすばらしい。大団円で終わるハリウッド映画も好きだし、斜に構えて最悪な終わり方をするトラウマ映画も好きですが、私はこういう静かで穏やかでなんとも言えない気持ちにさせられる映画がいちばん好き。!!

元になった短編が是枝監督なのでかなり「ぽい」のですが、ここまで重くてそれでいてうまく描かなければ薄っぺらく安っぽくなってしまう難しい題材を、約2時間飽きさせることなく(しかも大きな山場も絶望もない描き方で)撮った早川監督、すごい。長編デビュー作とのことなので、本当に今後がかなり気になる監督。

私は最近「磯村勇斗まじでサイコーの役者」と絶賛しているのだけど、本当にまだ若手の磯村勇斗が大ベテラン倍賞千恵子に食らいついていっていて、改めて脱帽。登場する人物全員静かな演技なのですが、その静謐さの中に若干狂気めいたものを感じるほどの静かな熱演。

ラストシーン、朝焼けではなく夕焼けで終わるのがとても良かった。「斜陽」などと言うけれど、最後に目がくらむほどきらめく瞬間があるのが夕焼け。そして一度沈むからこそ昇るのだし、昇るのだから必ず沈む。1日は確かに死ぬ。流転し循環するその狭間、そこに悲しみを見いだす人もいれば光を見いだす人もいる。やっぱり映画は余韻と空白があってなんぼだと再認識させられる本当に良い映画でした。良いもんみたな~

 

 

『心霊 x カルト x アウトロー

福岡県北九州市を舞台に繰り広げられる前代未聞の裏社会派心霊調査ドキュメンタリー。予想だにしない事態の連続に翻弄されながら、調査は思いもよらない方向に転がっていく。一時、続行不能状態に陥りながらもクラウドファンディングの達成によって公開にこぎ着けた、執念の意欲作。

これほどまでに「そういうオタク」を引き寄せて「そういうオタク以外」には見向きもされないタイトルがあるだろうか。こんなタイトル、ずるいよ。天才じゃん。

モキュメンタリが好きなので(ホラーの有名どころだとコワすぎとかね)うきうきで鑑賞したのですが、もう、タイトルにある通り。心霊でカルトでアウトロー。だんだんよくわからない方向へ話が転がっていく様が、モキュメンタリの体だからこそ生きる良い構造になっている。そして迎える煮え切らないラストのモヤモヤがたまらない。こういうの、好き。

 

『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』

瀬戸内海の離島で、日本有数の資産家が莫大な遺産を遺して変死した。資産家は死の直前に、娘の誘拐未遂事件の犯人捜索を若宮に依頼していた。真相を探るべく島へやって来た獅子雄と若宮の前に現れたのは、異様なたたずまいの洋館と、そこに住まう華麗な一族の面々と怪しい関係者たち。島に古くから伝わる不気味な魔犬の呪いが囁かれる中、島内で新たな事件が連鎖的に発生し……。

バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版 : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

映画『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』公式サイト

声を上げて爆笑できる空間で見た方がいいので、ニコ生実況とかが最適解だと思う。

私はシリーズ初見で、予告を観て気になってはいたので「シリーズを観ていなくてもいける」というフォロワーの後押しで鑑賞。さっくりとした感想としては「邦ドラの劇場版という感じだし、まあでもそのわりにはテレビサイズ感が他の劇場版よりはまだマシで良かったかな」というものなのですが、あの、なんていうか めっちゃおもしろいね!!??本当に笑ってもいい状況で観たかった!!!

(フォロワーにすすめられて観たのでどう感想を言うか悩んだのですが、取り繕っても仕方ないので、基本的には「マジ」の感想を言います。気を悪くしたらごめんね。)

登場人物全員倫理観うっすらバグってるのもウケるし、そもそも本作の核になるはずの狂犬病の解像度がびっくりするくらい低くて「うそ!!??ww」になった。おもろ。ディスじゃないです、マジでおもろくて良かったので。
まず原作が今と時代背景が違い過ぎるので、現代で再現したときにどこまでもフィクション感が強くなってしまう(諸々の設定のガバさも相まって安っぽさへ繋がってしまう)というのがあって、横溝正史の世界観で再現したらまだ見られたのにな……という感覚は否めない。犬の銅像とかセットが微妙にちゃちかったのも惜しかった。邦ドラ、そういうとこある…………。

という悲しみの感想もある一方で、マジでおもろいという感想もあります。先生、それただのストーカーやん。

ラストについては思想を違えてしまったので残念でしたが(これは本当に仕方ない)(性癖の問題なので)、なんだかんだ次の劇場版もあれば観ます。オモロなので。

 

ハケンアニメ!』

地方公務員からアニメ業界に飛び込んだ新人監督・斎藤瞳は、デビュー作で憧れの天才監督・王子千晴と業界の覇権をかけて争うことに。王子は過去にメガヒット作品を生み出したものの、その過剰なほどのこだわりとわがままぶりが災いして降板が続いていた。プロデューサーの有科香屋子は、そんな王子を8年ぶりに監督復帰させるため大勝負に出る。一方、瞳はクセ者プロデューサーの行城理や個性的な仲間たちとともに、アニメ界の頂点を目指して奮闘するが……。

ハケンアニメ! : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

映画『ハケンアニメ!』公式サイト

傑作!!!!!!!

社会で働くすべての人間、たぶん泣いてしまう。これはあくまでクリエイティブな職業の話ではあるけど、根幹にあるのは仕事賛歌なので、あらゆる職業の人にぶっ刺さるものがある。仕事賛歌などと言うとよくないブラック企業のようですが、つまりは「律儀に勤勉に自分の仕事をまっとうする」ことの尊さのことで。やりがいだけで搾取されるのではなく、そこには必ずお金の話もワークライフバランスの話もあって、食い扶持と浪漫をどう折り合いつけていくかという全社会人共通の永遠の課題を「アニメ」という可視的に分かりやすい生業を通して描き切っている。根本的に『ハケンアニメ』と『シンゴジラ』は同じ。です。

とにもかくにも本当に良くて、良くて、何をどう語ればいいのか分からないのですが、私はかなりうるっときたのよ。

「きみを絶望させられるのは世界にきみだけだ」、座右の銘にしたい。

そして「この世は繊細じゃないけど、生きてたら分かってくれる人が現れる。分かってくれたって、思えるものと出会える」という言葉が、そこまで描いてきた本作の丁寧な仕事ぶりに乗っかって非常に体重の乗った言葉になっている。生きてきた中で「この歌/映画/漫画/音楽/任意の何か は私を分かってくれた。私のことだ!」と一度も思ったことのないひとは恐らくいなくて、ほんの少しの心の支えになる何か大事なものをみんな胸の中で守りながらきっと生きている。“あの歌”を聴きながら泣いた日を思い出しつつ、むかえる終盤の爽快さ、きもちよさ。

モノづくりっていいな、まじめに頑張るって素敵じゃん、なんて思いながらつく帰路はなんだかちょっと良かったです。

一時は2週間で上映終了になる館もある中、映画の良さと口コミで再度上映館が増え、満席状態になっているシアターもある現状が、すごく本作のメッセージと重なっていてうるっと来た。

もうすこしだけ生きようという気持ちになる映画でした。よき。

 

『神は見返りを求める』

合コンで出会った、イベント会社に勤める田母神と、ユーチューバーのゆりちゃん。再生回数に頭を悩ませるゆりちゃんを不憫に思った田母神は、見返りを求めずに彼女のYouTubeチャンネルを手伝うようになる。それほど人気は出ないながらも、力を合わせて前向きにがんばっていく中で、2人は良きパートナーとなっていく。しかし、あることをきっかけにやさしかった田母神が見返りを求める男に豹変。さらにはゆりちゃんまでもが容姿や振る舞いが別人のようになり、恩を仇で返す女に豹変する。

神は見返りを求める : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

映画『神は見返りを求める』オフィシャルサイト 2022年6/24公開

6月下旬、ギリギリで上半期ベスト映画に滑り込んできた!!!!最高!!!なにが最高?わからない、めっちゃ最高。私はこれ以上何も言わない、全員神見返求を観てくれ。ホラーやゴアが苦手だから真事故物件が観られなかったフォロワーも、これなら見られるでしょう。頼む。ほんま頼む。

予告から想定していた話とは少し違ったけど、なにひとつ無駄がなく、非常に良い映画。デフォルメ(誇張)されているけど決して一面的ではない人物たち、そしてあまりに解像度が高すぎる描写、多くを語らず余韻を残してエンドロールへ向かうバランス感覚の良さ、なにをとっても素晴らしい。

映画は雄弁に仔細を解説しないでほしいので、きちんと空白のある本作が大好きです。

そしてマジのときのムロツヨシ、だいすき。

上半期まさか滑り込みでこんな神映画が観られるとはね。神だけに。ドッ

 

『ALIVEHOON アライブフーン』

内向的な性格で人付き合いは苦手だが驚異的なゲームの才能を持つ大羽紘一は、解散の危機に陥ったドリフトチームにスカウトされる。eスポーツの世界で日本一のレーサーになった紘一は、実車でもその才能を発揮して活躍するが、そんな彼の前に、生死を懸けてレースに挑む者たちが立ちはだかる

ALIVEHOON アライブフーン : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

映画『ALIVE HOON(アライブフーン)』 公式サイト|6月10日公開

陸のトップガンことアライブフーン。

恥ずかしくなるくらいベッタベタな少年漫画を恥ずかしがらずに“マジ”で真正面からやりきる姿勢、とても良い。そしてCGなしでドリフト映画を撮ろうとする心意気や、バカクレイジーで最高!!

ストーリーは「少年漫画」としか表現できないけど、むりやり2時間に収めたような映画なので物凄く駆け足。そのため人物描写やヒューマンドラマはかなり薄くなってしまいスナック感は否めないけど、脚本を薄くしてでも2時間ずっとドリフトを見せてくれるので大満足。

もちろんハリウッドなんかに比べたら規模感は小さくて「もう一声!」という感じはあるけど、とにかくできる限りの気骨あるドリフトが観られます。やったぜ。

 

 

 

というわけで6月お疲れ様でした。最近は邦画が豊作でうれしいなあ。ここからは怒涛のホラー公開ラッシュの7月へ突入。例年にないくらいのラッシュぶりじゃないですか?世界、生き急いでいるのか?

ちなみに私は7月スタートは哭悲で迎えます。がんばるゾッッ

2022年5月に観た映画の話をする

すでに夏の気配を隠さないの、やめろ。地球。

 

 

『N号棟』

2000年に岐阜県富加町で起きた「幽霊団地事件」の実話をモチーフに描いた都市伝説ホラー。とある地方都市にある、かつて心霊現象で話題となった廃団地。死恐怖症を抱える大学生の史織は、同じ大学に通う啓太や真帆と興味本位でその廃団地を訪れる。そこにはなぜか多くの住人たちがおり、史織たちの前で激しいラップ現象や住人の自殺が続発。しかし住人たちは顔色ひとつ変えず、怯える若者たちを仲間にしようと巧みに誘惑してくる。神秘的な体験に魅せられた啓太と真帆は洗脳され、追い詰められた史織は自殺者が運び込まれた建物内へ入り込むが……。

N号棟 : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

映画「N号棟」公式サイト | 2022年G.W.全国ロードショー

わーーーーい!!!!おもしろい!!!楽しい!!!!

楽しい映画です。でも最近見たJホラーがこのN号棟と真事故物件なので、Jホラーの平均値を勘違いしてしまいそうになる。ここらで「うーん、まあ悪くはないけど、ね」くらいの映画を連続で食らっておかないと、感覚がバグったままヤバい映画(邦画CUBEとか……)を観たらショックで死んじゃうかもしれない。

それにしてもこの映画といい後述する『死刑にいたる病』といい、「はい、こちらこのような手口を用いて洗脳をしております。洗脳はこのように行うと効果的です。はい、洗脳が完了しました」みたいな映画が多いな。本作も「洗脳でござい」という感じのソーンが多くて、それでいてわりと死体描写に力が入っていて満足度が高い。

主人公も図太くてガンガンに物理攻撃を仕掛けてくるクソアマなので、観ていて変な負荷がない。(泣いているだけのヒロインは観客への負荷が高すぎる)しかもめ~~~~っちゃ顔が可愛い。コムアイみたい。かわいい!!なりたいなあ

そして終盤で「死を正しく恐れろ」というメッセージが打ち出されるのですが、私はマジで泣いてしまいましたね。メッセージ性の高さ、『アンナチュラル』じゃん………………
死は万人に等しく訪れるもので日常の延長に存在しているから恐れるべきものではなくて、でも死はひとつの転換点として万人に存在しているからきちんと正しく恐れなければならない。むやみやたらに怖がるのではなく、真摯に向き合って、ちゃんと恐れて受け入れなければならない。怒涛の終盤に、カルトホラーであるはずの本作なのに主人公への救いと我々への啓蒙があって、そのシンプルで飾り立てないラストに胸を打たれて泣いちゃいました。わたしも死を正しく恐れてすべてに報われたいよ~~~~~ん……

N号棟、いい映画だ。

 

『ハッチング 孵化』

北欧フィンランドで家族と暮らす12歳の少女ティンヤ。完璧で幸せな家族の動画を世界へ発信することに夢中な母親を喜ばすため、すべてを我慢し自分を抑えるようになった彼女は、体操の大会優勝を目指す日々を送っていた。ある夜、ティンヤは森で奇妙な卵を見つける。ティンヤが家族には内緒で、自分のベッドで温め続けた卵は、やがて大きくなり、遂には孵化する。卵から生まれた「それ」は、幸福に見える家族の仮面を剥ぎ取っていく。

ハッチング 孵化 : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

映画『ハッチング ー孵化ー』公式サイト

 

児相!!!!!!!!!!!!!

 

「メンヘラ彼女と理解ある彼くん」の20年後強化版でぞくぞくしました。理解ある彼くんはやがて意思のない父親になる、自然の摂理ですね。教科書にも書いてます。

 

かなり良い意味で思っていた通りの映画で私は大満足なのですが、とはいえ全部母親のせいなんですよね・・・・・・・親ガチャ大失敗・・・・・・・・・

あと不倫相手もたいがい頭バグってるくせいに相対的に常識人ヅラしててウケる

 

『死刑にいたる病』

鬱屈した日々を送る大学生・雅也のもとに、世間を震撼させた連続殺人事件の犯人・榛村から1通の手紙が届く。24件の殺人容疑で逮捕され死刑判決を受けた榛村は、犯行当時、雅也の地元でパン屋を営んでおり、中学生だった雅也もよく店を訪れていた。手紙の中で、榛村は自身の罪を認めたものの、最後の事件は冤罪だと訴え、犯人が他にいることを証明してほしいと雅也に依頼する。独自に事件を調べ始めた雅也は、想像を超えるほどに残酷な真相にたどり着く。

死刑にいたる病 : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

映画『死刑にいたる病』オフィシャルサイト 2022年5月公開

 

肉食獣ではなく「食虫植物」。

 

白石和彌のバイオレンスの描き方は、単純な強弱や痛覚の描写(つまり「視覚」の情報)だけに頼らず、嗅覚まで刺激するような表現が巧みであると思っていて。

私は韓国ノワールをほめちぎるときにバイオレンス描写における「温度感」の話をよくするのですが、これは(乱暴な括り方であるということと誤解をおそれずに言うのであれば)アジア映画に顕著な特徴なんじゃないかなと思っています。強み。
真夏の満員電車で他人の肌に触れてしまったときの不快感、嫌悪感。そういったものが根底にある、ぬめった血の生ぬるさと不快な臭いが観客に伝わってきて嫌な気分にさせるようなバイオレンス描写。

R12とは思えないくらい、「直視」させてくる映画です。想定していたより序盤からギアぶっぱなしてきたので(爪!爪!)、アッッこれ白石和彌だった!!!!!!となりましたね。

白石和彌の暴力、『孤狼の血』もそうだったけど、想像できるリアルな苦痛なのが本当にいやだ。まあ、好きなんですけど……

 

R12にしてはかなり攻めているバイオレンス描写に意識が向けられがちですが、本当に単純に映画を作るのが上手い。何度も繰り返される面会のシーンでは二人の間のアクリル板の反射を使って、2人の輪郭を完全に重ねたり、少しずらしたり、片方の輪郭だけぼやかしたり、どちらかの陰影を濃くしたり、1つのギミックで状況や関係性を示唆していることに顕著でしたが、本当に単純に、映画がうめぇ。

 

最初に食虫植物と言ったように阿部サダヲの演技が非常に秀逸で、なぜそこまで目の光をなくせるのか恐ろしくてたまらない。

『哭声』がヒットしたあと韓国ではわがままを言う子どもに「いい子にしないと國村隼が来るぞ」と脅す手法が一部家庭にて流行したと聞きましたが、日本でも「いい子にしないと阿部サダヲがくるぞ」と脅せばいいと思う。

ただ阿部サダヲおよび脇を固めるベテラン勢の演技がかなり良かったせいで、岡田健史や岩田剛典など若手陣の今一歩及ばないところが際立ってしまい、役どころを食われてしまっていた印象。disではないのですが、個人的には、岩田剛典の役どころはめちゃくちゃ重要なのにいまいち印象にないというか希薄な感じがしてしまうので、全体的にもっと実力派の俳優で固めてほしかったという感想が否めなかったです。そこだけちょっと残念。

 

ところでなんでこの阿部サダヲはさんかく窓の岡田将生しか着ないような私服を着てるんだ。なんや、その……胸元のフリルは……

 

『シン・ウルトラマン

「禍威獣(カイジュウ)」と呼ばれる謎の巨大生物が次々と現れ、その存在が日常になった日本。通常兵器が通じない禍威獣に対応するため、政府はスペシャリストを集めて「禍威獣特設対策室専従班」=通称「禍特対(カトクタイ)」を設立。班長の田村君男、作戦立案担当官の神永新二ら禍特対のメンバーが日々任務にあたっていた。そんなある時、大気圏外から銀色の巨人が突如出現。巨人対策のため禍特対には新たに分析官の浅見弘子が配属され、神永とバディを組むことになる。

シン・ウルトラマン : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

映画『シン・ウルトラマン』公式サイト

「これ、村の決まりやから」に続くインターネットオタクワードミーム、「私の好きな言葉です」 汎用性が高い

 

インターネットでクソつまらんバズ狙い大喜利のネタにされる前に観なければと、初日のチケットをとりました。ミッドサマーの件、まだ許していない。

一言でこの映画を言うと「庵野の余生」でした。リタイアした経済的自由者が都会から車でいけるくらいのほどよい山の方で小さい養鶏場を営むように、シンゴジラにはまだ感じた「商業映画としての成功(つまり利益)」を追う意識は感じず、ひたすらにインディーズムービーで、ウルトラマンのファンムービーのよう。これは悪口ではなく、観れば観るほど「ま~~~~エヴァ終わらせられたしな・・・・・・・おつかれちゃん」という気持ちになりますね。

もちろん本人もこれに関しては自覚的だろうし、余生を楽しく過ごせるならそれでなによりだよ。

ただ一般的なリタイアした人間と違って、庵野は「成功したカリスマ」なので、余生を過ごすにしてもビッグタイトルを借りられてお役所など公的機関や自衛隊が協力してくれて著名な俳優が集まってくれる。私の知る70代のおじいちゃんが、自分のおこした事業も成功して息子にその事業を譲った後、余生の楽しみとして音楽製作をしてインディーズでのんびり楽しくやっているのですが、そのスケール感が尋常ではないのが庵野のこの余生のあり方なんだろうかと思ったり。

長澤まさみへの「セクハラ」的描写が物議をかもしていて、その議論が発生することは現代ではごく自然なことだと私は理解しているのですが、ただ(細かな描写にもう少しカバーするための予防線は必要だっただろうけど)一連の「セクハラ」的描写が庵野や樋口の思想や資質に由来するモノかと言われたらそうとは思えず。例えばドラえもんのファンムービーをつくるときに「きゃー!のび太さんのえっちー!」というお風呂描写があったとして、それが監督の思想に由来するものかと言われたら、いやそういうわけではないだろうと。これは極端な例ですが、あるコンテンツやジャンルにおける一種の紋切り型の再現を行うという話であるように思います。とはいえ、「きゃー!のび太さんのえっちー!」シーンを現代になにも考えずに再現してよいものなのかという議論は、また別個に存在はしますが。

私は戦隊モノのモモレンジャーの存在には疑問を呈していますが、自分が戦隊モノのファンムービーを撮れと言われたらモモレンジャーだしちゃうもんな。

そしてそもそも件の「セクハラ」になりかねん描写については、おそらくコミック的表現として在ったのに生身の人間がそれを演じると生々しくなってしまいノイズが生じてしまうという根本的な躓きであったとも思います。

 

内容自体の感想としては、まあ米津が全部いってくれているので、語ることがあまりないです。米津に勝てるわけ、ないので……。

 

禍威獣とかいう当て字には「庵野しゃらくせ~~~~~!」となってたけど、開始30秒で怒涛の怪獣ラッシュシーンでは不覚にも「お、おもしれ~~~~!!」となってしまいました。くやし~~~。

無能に描かれているわりに妙に決断は早い政治家たちや、怪獣が暴れている地域で子どもが残っていることにそこまで大きく驚くことはなく身一つで保護に向かうカトクタイなど、些細なところに「禍威獣出現に適応した日本」がにじみ出ていて、そういったところにパラレルワールドとしての面白さが結構あった。

神永がなぜウルトラマンになったのかの真相を知ることはなく恐らく地球人の登場人物全員「神永は最初からウルトラマンだった」と誤解していそうなあたりとか、そういった「認識のずれ」が訂正されないまま物語が進行して終わっていく感じとか、非常に庵野作品らしさがありました。

ちなみにCGとかあれでいいんですかね。シンゴジラのほうが特撮へのリスペクトを強く感じたのですが、今回はちょっと質感などぬるぬるしていて特撮みが薄かったような気がします。私は『アナコンダ』シリーズを愛しているのですが、シリーズを重ねるほどCG技術が向上して逆にリアリティがなくなっていくことに小学生ながらにキレていたことを思い出しました。

……というのが観た瞬間の率直な感想ではあったのですが、落ち着いて振り返ってみれば、やはり安易に技術を選択したとは思えず、いわゆるコマ撮りやアニマルエレクトロニクスのようなアナログ『特撮』技術と、それをいま食い尽くさんばかりのデジタル技術とが共存し融合したなら……という浪漫(映像に携わる人間にとっては執念なのかもしれない)の一種の形だったようにも思います。

正直この映画が「面白い」かどうかはかなり賛否両論だと思いますが、オマージュを捧げるファンムービー的だからこそ(余生だからこそ?)出来た気骨ある作品だとは思います。20代30代には作れないような気がする。

 

オールド・ボーイ(4K)』

平凡な会社員オ・デスはある日突然何者かに拉致され、ベッドとテレビしかない狭い部屋に監禁されてしまう。理由も目的も分からぬまま15年の歳月が流れたある日、オ・デスは突如として解放される。若い女ミドの協力を得て犯人捜しに乗り出したオ・デスの前に、謎の男ウジンが出現。ウジンはオ・デスに、監禁された理由を5日間で解き明かせと、互いの命を懸けたゲームを持ちかける

オールド・ボーイ(2003) : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

映画『オールド・ボーイ4K』オフィシャルサイト

 

2003年公開の本作が4Kで上映されたので、観てきました!!

 

『渇き』『お嬢さん』のパク・チャヌク監督なので、まあハピハピラブラブ♡♡な作風なわけもなく。原作は日本の漫画ですが、韓国映画お家芸というべきか得意技というべきか、生ぬるくてかなり嫌なバイオレンス描写が非常に際立っている。

この映画を「胸糞」と表現する人も多いだろうけど、私は「鬱勃起」のほうが近いかなと思いましたね。(鬱勃起が分からない人はニュアンスを感じ取ってください。オタクワードです)

私は昔なにかのドラマか映画で『行方をくらました娘かもしれないから、泣きながらある女優のAVを観る両親』というシチュエーションを観て「鬱勃起」の巨大な概念を食らったのですが。そういうことです。私は、鬱勃起が、好き。

 

観ていて「めっちゃ好き♡」と「めっちゃやだ……」を反復横跳びさせられるので情緒が不安定になる。もうめちゃくちゃだ。勘弁してくれ。好きだ。気持ち悪い。

始まりから終わりまで、生々しく気色悪いバイオレンス描写(グロではない)が続き、そこに肌を逆なでされるような居心地の悪い不快感が満ちていき、2時間かけてその心がざわざわする温い不快感に支配され尽くして、からっぽの大穴をのぞき込むような空虚なラストに茫然とする。そういう映画。

こういった感情を抱かされるのも、全てパク・チャヌクの術中にあるのかと思うとくやしいですね。映画の構成が上手い。くやし~~~~!好きだ。最高!本当にいやだったな。

 

ウジンが全てに対して振り切っていて異常さに対して一貫性を持っているのでかなり好印象。蛇のように執念深い男。ラストの潔さも含めて、良い。最後にはなにもかもがからっぽになってしまう映画だけど、そもそも最初からすべてからっぽで、宇宙なんてハナからなかったのかもしれないな。などと思ってしまうような、空虚な映画でした。

 

わたし、本当に痛いの。でも我慢してるの。…………いい? おじさんを喜ばせたいの。…………

 

(以下少しネタバレ)

私は近親相姦を愛しているオタクなのでわりと序盤で姉弟にも父娘にも「ん……もしや……」と思ってはいたのですが、その上でなお「そりゃ…………ないぜ…………神なんておらんのや…」となりました。本当に気分が悪くなっちゃうな。好きだ!

 

 

『クリーチャー・デザイナーズ ハリウッド特殊効果の魔術師たち』

ターミネーター2」「ジュラシック・パーク」「スター・ウォーズ」など映画史に残る数々の名作に登場するクリーチャーやモンスターたちと、彼らを生み出してきたクリエイターたちの関係性に迫ったドキュメンタリー。想像の産物であるクリーチャーやモンスターをスクリーン上に出現させる特撮、特殊効果、特殊造形、そして近年発達の目覚ましいデジタル技術の魅力と背景を、数々の映画で活躍してきた著名アーティスト、クリエイターたちのインタビューをもとに探っていき、「現代のフランケンシュタイン(怪物の創造主)」とも呼ぶべきスペシャリストたちが、クリーチャーやモンスターに息吹を吹き込む瞬間を映し出していく。「スター・ウォーズ」の特撮を担当したフィル・ティペットや、「パンズ・ラビリンス」「ヘルボーイ」の監督ギレルモ・デルトロ、「ターミネーター2」特撮のデニス・ミューレン、「メイ・イン・ブラック」特殊メイクのリック・ベイカーら著名クリエイターが多数出演。

クリーチャー・デザイナーズ ハリウッド特殊効果の魔術師たち : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

映画『クリーチャーデザイナーズ ハリウッド特殊効果の魔術師たち』公式サイト

シンウルトラマンで門外漢ながらも特撮のありかたやアナログとデジタルの行く末を考えた身としては非常にタイムリーな映画。(製作は2015年ですが、日本劇場公開は先日だったので)

私は最初情熱大陸的な、自分の仕事にプライドを持つ超一流の技術者たちがその巧みの技とロマンを語り、やがて体系的にハリウッド映画史の特撮史をひもといていくような話かと思っていたのですが、徐々に生々しい話へと転換していき。

椎名林檎曰く「浪漫と算盤」、夢と飯の種のことを天秤にかけながら、悩み苦しみ悦び祝い、手がけていく生業。

栄枯盛衰といえばあまりに簡単な言葉ですが、映画を愛し映画に執心しているからこそ逃れられない苦しみと社会構造への悲哀がきりきりと描かれ(そもそも当人たちの言葉で語られるのだから生々しくて当たり前ですが)、昨今特に取りざたされるエンタメ業界での賃金や待遇・尊厳の問題が、やがて終盤には我々すべてに共通する労働の問題に押し広げられて、観ているこちらまでなんか息切れしてくる。エンタメという特殊な世界の話だからこそ、ある意味一般化して顕著にその問題が捉えられやすいのかもしれない。

と、後半のひりひりしたパートの話ばかりしてしまいましたが、出てくる技術者たちは私でも知っているような超有名な作品を手がけた人たちで「あの映画の舞台裏」が垣間見られるのはとても楽しかった!!特殊効果ってほんとうにすごい。私がずっとCGだと思っていたものが特撮技術であったと知り、え!!??うそ!!??正気!!??などと何回も思いました。職人、すげ~~~~~

人間って大人になると職人や農家酪農家のような自らの手で自然に触れてなにかをつくる人に漠然と憧れてしまうものですが(都会はつらいね)、その「万人が抱く職人へのふんわりした憧れ」を可視化したような映画。そして当人たちも同じように映画に浪漫を抱いていて、もはや執心といっていい。やっぱり愛って呪いだよなと思ったり。

呪い呪われている彼らの錯綜する言葉の最後、映像のラストでデルトロが「怪物がスタジオに入ってきたとき、私は私の人生を完璧だと感じる」と心底嬉しそうに笑っていたのが印象的でした。なんてストレートで純真でどうしようもない呪縛なんだろうか。

 

『スプリー』

ライドシェアドライバーのカート・カンクルはフォロワーを増やしたい一心であるアイデアを思いつく。それは乗客を手にかけ、その様子をライブストリーミングで配信するというとんでもないものだった。カートはSNSをバズらせて人生の一発逆転をもくろむが、「フェイクだ」「退屈だ」と、反応は散々なもので、まったく盛り上がる気配がない。思惑がはずれたカートの怒りの矛先は乗客にとどまらず、拡散させないインフルエンサーにまで向けられていく。

スプリー : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

https://synca.jp/spre

荒唐無稽でナンセンスなストーリーながら、昨今量産される「SNS社会を皮肉った映画」としてはなかなか良い出来。もちろん大前提としてナンセンスバイオレンスなのですが、そのナンセンスさが上滑りする様がSNSの空虚さを揶揄する本作の構造によく合致していて、どこまでも意味が無いからこそ意味を持つ映画。

バイオレンス描写に関してはいわゆるゴアというほどではないので、個人的には期待していたほどではなく拍子抜けでしたが、まあしょっぱなから倫理感バグり散らかしている登場人物たちに満足。全員虚構に飲まれすぎ。

ラストまで全てナンセンスだったのが、潔くて非常に好印象。

バズるために殺人ライブ!!というのはさすがにフィクションが過ぎますが、これくらい倫理観が麻痺してしまった捨て身のバズ狙い配信者が何かをやらかさないとは決して言い切れなくて、「もしかしたらいつかあるかもな」なんて思ったりもしました。

 

『先生、私の隣に座っていただけませんか?』

漫画家・佐和子の新作漫画「先生、私の隣に座っていただけませんか?」。そこには、自分たちとよく似た夫婦の姿が描かれ、さらに佐和子の夫・俊夫と編集者・千佳の不倫現場がリアルに描かれていた。やがて物語は、佐和子と自動車教習所の先生との淡い恋へと急展開する。この漫画は完全な創作なのか、ただの妄想なのか、それとも夫に対する佐和子からの復讐なのか。現実そっくりの不倫漫画を読み進めていく中で、恐怖と嫉妬に震える俊夫は、現実と漫画の境界が曖昧になっていく。

先生、私の隣に座っていただけませんか? : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

映画『先生、私の隣に座っていただけませんか?』公式サイト

近年の邦画のなかでは結構な傑作だと思います。

私は黒木華の容貌や演技が凄く好きなのですが(銀座の高級クラブでママに信頼されているホステスにいがちな、品があるのにそこはかとなく艶っぽい瓜実顔で、本当に綺麗)、本作でも「……うん……」「……うーん」「……」という演技の間の取り方や発声が本当に絶妙。その絶妙な黒木華の演技が、フィクションとノンフィクションの境界を曖昧にする……やがてぐちゃぐちゃに溶かしてしまう脚本とよく合致していて、一気に世この映画の界観を整える怪演であったと思います。主演2人のキャスティングも「この人じゃないとだめだ」と思わせるものであったし、脇を固める奈緒というキャスティングも非常に良かった。彼女は溌剌としていて天真爛漫でありながらどこか「ヤバい」女の演技をさせたらなかなかにピカイチだと思っているので、個人的には最強の布陣でした。

黒木華ちゃんも本当にきれいな瓜実顔で、おとなしくて地味に見せかけながら腹の中でいろんなものが渦巻いている「女」を演じさせたら、ものすごく爆発的に煌めくひと。これは本当に誉め言葉なのですが、いま日本の女優のなかでいちばん「不倫」という言葉が似合うと思ってます。『来る』の演技もとてつもなく良かったね・・・・・。

 

先に述べたように、黒木華の間の取り方に代表されるように本作はなかなかにしっとりと静謐な間で進んでいくので、刺激的で面白い映画、スリリングさを求めた人からすれば期待外れかもしれません。でも私は、その静謐な中で日常と非日常がアンバランスにどうにか均衡を保っていて、でもひとつ虚構が剥がれていくと途端に全てが足元からぐらぐら揺らいでいく感じ、そのひんやりとした畏怖が凄く雰囲気に合っていて、好きな映画です。

全てを見終えたあとにもう一度見返すと、細やかなギミックに気付いてまた楽しい。

かなり好きな映画です。

ちなみに本作や『哀愁しんでれら』(面白かったね~~~~)を輩出したTSUTAYA CREATORS' PROGRAM FILM 2018、今度は『この子は邪悪』というタイトルからビンビンに惹かれる映画を公開予定なので、もう楽しみで仕方ないです。人生、バラ色ってか。

 

トップガン マーヴェリック』

アメリカ海軍のエリートパイロット養成学校トップガンに、伝説のパイロット、マーヴェリックが教官として帰ってきた。空の厳しさと美しさを誰よりも知る彼は、守ることの難しさと戦うことの厳しさを教えるが、訓練生たちはそんな彼の型破りな指導に戸惑い反発する。その中には、かつてマーヴェリックとの訓練飛行中に命を落とした相棒グースの息子ルースターの姿もあった。ルースターはマーヴェリックを恨み、彼と対峙するが……。

トップガン マーヴェリック : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

映画『トップガン マーヴェリック』公式サイト

 

トップガン マーヴェリック お前が空の王者!!!!!!!!

 

私は前作『トップガン』が製作されたときにまだ産まれていないどころか親がまだ未成年のキッズだったくらいなので、正直この映画に思い入れは全く無いのですが、天をも突き抜けるほどの大評判を聞いて観に行きました。

それに際してアマプラで前作を観たのですが(ヤバ噂は小耳に挟んでいたので字幕で観たよ)、まずトムクルーズが若すぎて最初の方は話が入ってこなかった。トムクルーズ、「少年」じゃん!!??!?内容についてはまあ派手で画面映えはするだろうしストレスのない「ハリウッド映画」の起承転結で、観たいと思ったモノが観られる感じ。若干駆け足なのと些細な構成に粗が否めないのはあるけど、でもまあいかにもハリウッド大作って感じでいいわね~などと思っていました。それより、やっぱい80年代の映画だからか音楽は古めかしさを感じちゃうな、なんて思っていました。が、

トップガン マーヴェリック お前が空の王者だ!!!!!!

前作に思い入れがない私でもほろりときてしまうくらいの、クサいほどに熱くてストレートな映画!いやかない久々に「ハリウッド映画を観た」という気持ちにさせてもらいました。ハリウッド、最高!

冒頭から前作へのオマージュが散りばめられていて、そこに愛があることが凄く分かる。それだけでグッときてしまいますが、さらに前作を踏まえたうえでめちゃくちゃストレートに「観たいものを見せてやるよ」という圧倒的な気骨を感じる脚本構成と画面。ともすればクサくて恥ずかしくなっちゃいそうな表現も物凄くまっすぐに撮りきられていて、「これが!!!トップガン!!!!」という凄みがある。とんでもねえ。

飛行シーンについては、ふつうであれば機体を外から撮った描写にアクションシーンの大半が割かれるはずですが、むしろ機体がびゅんびゅん飛ぶ姿のほうが退屈に思えてしまうくらいパイロットたちの「顔だけ」のアクションシーンが圧巻。そしてなによりトムクルーズの「顔だけ」の凄みと言ったら、もう表現ができない。「なんだその目つきは」というような台詞が繰り返し出てきますが、本当に、なんだその目つきは…………。銃弾やミサイルや閃光や血しぶきを軽く凌駕する「目の演技」、これだけで前作を観ていない人でも一見の価値がある。

そして前作では古いなと感じてしまった音楽が、一気にエモーショナルな気持ちにさせる最高のBGMになっていました。最高。最高しか言ってないなわたし。

こんなの青春ドンピシャのおじさんおばさんが観たら泣いてしまうのでは?と半泣きになりながら観ていたのですが、案の定そこかしこから鼻を啜る嗚咽が聞こえてきて、顔も名前も知らないおじさんおばさんの青春の片鱗に触れてしまったことでまたちょっと泣いてしまった。かつてはみんな青かった。そうだよな。

少なくとも私はとても愛のある、そして気骨溢れる続編だと思いました。「正解」の映画。
アマプラなどで今後本作が公開されたときに「うわ~映画館で見ればよかった~」と思ってしまう人を少しでも減らすために、みんな今劇場で見てください。

 

ちなみに私は愚かな女なので、『トップガン』のラスト10分くらいまでふつうに空軍の話だと思ってました。だって空、飛んでるんだもん……

 

 

 

さて5月も生き延びましたね。これからはお楽しみのホラーラッシュですね!!!!エンタメにすくわれたりすくわれなかったりしながら生きようねっ

2022年3~4月に観た映画の話をする

とはいえ3月殆ど観ていないので実質4月の記録です。4月もあんまり見ていないけど。

何を観ようとしても「でも真事故物件より面白いわけないしな……」と賢者モードになってしまう映画インポテンツと化していました。だって真事故物件より面白いわけないし・・・・・・・・・・

 

 

『アンビュランス』

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アフガニスタンからの帰還兵ウィルは、出産直後の妻が病に侵され、その治療には莫大な費用がかかるが保険金も降りず、役所に問い合わせてもたらい回しにされるだけだった。なんとかして妻の治療費を工面しようと、血のつながらない兄のダニーに助けを求めるウィル。犯罪に手を染めるダニーが提案したのは、3200万円ドル(約36億円)もの大金を強奪する銀行強盗だった。計画通りならば、誰も傷つけることなく大金だけを手にするはずだったが、狂いが生じて2人は警察に追われる事態に。やむを得ず逃走用に救急車に乗り込んだ2人だったが、その救急車はウィルに撃たれて瀕死となった警官を乗せていた。乗り合わせた救命士キャムも巻き込み、ダニーとウィルはロサンゼルス中を猛スピードで爆走することになる。

アンビュランス : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

Universal Pictures Japan

一切の無駄がない、136分でしかありえない136分。たぶん広辞苑で「冗長」をひいたら対義語に「アンビュランス」が出てくる。中だるみなど無縁の映画。

そしてただ派手なだけではない。全てが無茶苦茶なことになる滅茶苦茶でハチャメチャな映画ですが、とんでもなくハチャメチャなくせに「キャラクターの非現実的なタフさ」がない。全員に生身の人間らしい弱さと強さがあり、それが嫌味たらしくなく、こういったアクション映画が陥りがちな「いやあ、なんだか主人公が(肉体的であれ精神的であれ)タフすぎてリアリティないわあ」という欠点を感じづらい。ここに妙なリアルさがあるゆえに、手術シーンのようなありえない展開ですらすんなりと受け入れられる。

オチについては都合がよすぎる気もするけど、まあ終わり良ければ全てよし!

ありえんアクションとありえるキャラクターの融合で、136分が136分でしかありえないくらい無駄も過剰な詰め込みもなく整然となり立ち、これでもかと披露されるドローンによる変態的なカメラワークで完成された映画。

見た人には伝わるけど、かなり修二と彰です。泣いちゃう

 

 

『ナイトメア・アリー』

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過去にも映画化されたことのある、1946年に出版された名作ノワール小説「ナイトメア・アリー 悪夢小路」を原作に、野心にあふれ、ショービジネス界で成功した男が、思いがけないところから人生を狂わせていく様を描く。ショービジネスでの成功を夢みる野心にあふれた青年スタンは、人間か獣か正体不明な生き物を出し物にする怪しげなカーニバルの一座とめぐり合う。そこで読心術の技を学んだスタンは、人をひきつける天性の才能とカリスマ性を武器に、トップの興行師となる。しかし、その先には思いがけない闇が待ち受けていた。

ナイトメア・アリー : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

ナイトメア・アリー|映画|サーチライト・ピクチャーズ

デルトロだからダークファンタジーかと思いきや『闇金ウシジマくん「カーニバルくん」編』です。

イヤ~~~なノワールがあますことなく描かれ、後味もわるいし、ずっと全てが小汚いのですが、なぜこんなに寂寞と切なさを感じるのか。デルトロらしく描かれる“クリーチャー”めいた人々の容貌に反し、中身はどこまでも悲しいまでに人間らしく、いわゆるダークファンタジー!!という風体ではないのですがものすごく面白かった。まあ、完全に闇金ウシジマくんなんですけども。

ちなみに、見おわった直後に座席を立とうとしたら、突然知らないおじさんに「面白かったですね」と言われてかなりびびりました。アッ……ヤバい人かな!?とかなり身構えたけど特に私を気にするそぶりもなく去っていったので、マジで「ナイトメアアリーが面白かったことを誰かと共有したかっただけの人」だったらしい。面白かったね。そういう魅力のある映画です。たぶん。

 

 

『女子高生に殺されたい』

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女子高生に殺されたいという理由で高校教師になった東山春人は、人気教師として日常生活を送りながらも、「完全犯罪であること」「全力で殺されること」が条件の理想的な殺され方を実現するため、9年間にわたって完璧な計画を練り上げてきた。平和な学園内で、着実に計画を進めていく東山だったが……。

女子高生に殺されたい : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

映画『女子高生に殺されたい』公式サイト

ケイタナカがマジでキモい。これ以外の感想ふっとんだ。すみません。他にないです。

美学こくなや!!と何回かキレそうになりましたが、終盤で正論くらって醜態さらしていてニッコリしましたね。うれしいー!最近ケイタナカはヤバい役多いな。自分は正しいと信じて疑わないナチュラルボーンヤバい奴の芝居がマジでうまい。たぶん、本人もナチュラルボーンヤバい奴の素質があるのかもしれない(名誉毀損じゃん)

 

2時間におさめるためにテンポは早いですが、まあ許容範囲。引き延ばされるよりずっと良い。

ちなみにあおいが古屋兎丸の実写化らしい顔をしていてよかったです。古屋兎丸のタイムラプスが観られるのでオタクは元がとれます。わたしもきみも、どうせライチ光クラブに呪われてんだろ。わかってるよ。

 

KKKをぶっ飛ばせ!』

1971年のアメリカ・テネシー州。無実の罪で投獄されていたブランドンは脱走し、姉のアンジェラに助けを求める。アンジェラは兄のクラレンスとともにブランドンのもとに駆け付け、彼を郊外の廃牧場にかくまう。しかし、その地域は白人至上主義団体「KKK」が活発に活動しており、特に黒人を捕らえてはその肉を食べることを趣味とする、異常な一派の拠点になっていた。3人は捕らわれてしまい、クラレンスが食われてしまう。監視の隙をつき、監禁されているアンジェラを救出することに成功したブランドンは、姉とともに復讐を開始する。

KKKをぶっ飛ばせ! : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

映画『KKKをぶっ飛ばせ』公式サイト

 

公式のあらすじが「イカれたレイシストどもをぶち殺す」なのが潔いし、本編もそれ以上の情報量が一切ないのも潔い。
ランタイム78分で、舞台設定を最初に提示したらさっさと殺戮はスタートして、マジで「イカれたレイシストどもをぶち殺す」だけが続く。

あらすじ以上の情報量が一切ないうっっっすい映画なんですけど、これは斜に構えているわけでも皮肉でもなく、非常にストレートな誉め言葉です。

古きよきスリラーにありがちなピコピコテロテロしたシンセが聴けるので、勝ち確。

演出としてはブラックプロイテーション映画をパロディし、それでいてオマージュを捧げるのは70年代B級……いやC級映画。「『ゲットアウト』『アス』を超える衝撃!」って、それもうちょっとジョーダン・ピールのことイジッってへんか?わるいな?

 

イギリス映画ながら全編KKK発祥のテネシー州で撮影されているらしく、イギリス映画なの「わかる~~w」になるし、TOCANA配給なのも「わかる~~w」になる。私はここの制作スタジオを初めて知ったのですが、ダークテンプルモーションピクチャーズという名前をエンドロールで見て、「絶対ジャンル映画しか作ってないだろ!!」と思いましたね。

 

KKKを観終わって外に出たら、噴水の前でブラスバンドが演奏をして通行人たちが手を取り合って踊っていた。“世界観”の“差”におしっこ漏らした。

 

『マリー・ミー』

世界的歌手カットと彼女の恋人である音楽界の新星バスティアンは、ファンの前で華々しく結婚式を挙げようとしていた。しかし式の直前、バスティアンの浮気が発覚。失意の中ステージに登壇した彼女は、客席にいた見ず知らずの数学教師チャーリーを指名し、突然プロポーズするという驚きの行動に出る。カットを取り巻くスタッフやマスコミ、ファンが大混乱に陥る中、互いを知るところから結婚生活を始める2人だったが……。

マリー・ミー : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

Universal Pictures Japan

kkkとハシゴして観た。

 

このご時世にはやっぱり肩の力を抜きたい、負荷のないストレートなラブコメ

宣伝では「逆シンデレラストーリー」という謳い文句が目立ったけど、構造自体は古典的なおてんばプリンセスと庶民男のラブストーリー♡に近い。
実際に男女が逆という意味では逆シンデレラストーリーではあるけれども、それはセックスの話で、ジェンダーとしてのミラーリングではない。これ男女逆だったらモヤるな~というシーンは多々あったんですけど(グラミーかかってるからって元恋人とのラブソングをデュエットすんなよ!絶対ツイッターでバッシングされるからよしなって!)、そもそもの構造が古典的なストーリーなので、少女漫画で育って意外とストレートなラブコメが好きな私としては、悪人もいないし負荷もかからないし気楽に観られて楽しかったです。
キャット、自立心バリバリの超気の強い都会的女性としてキャラ付けされているのかと思って観に行ったのですが、完全におてんばプリンセスでしたね。
浮気男は居るけど、悪人的なストレスは発生しない。

そういった映画なので、起承転結の「転」に相当するもの……ラブストーリーなので2人の破局が若干盛り上がりに欠けるというか、全体的にスナックな感じは否めないですが、私は頭からっぽにしてみたかったので程よい手軽さでした。重厚なラブコメを期待する人からすれば物足りないかと思うけど、正直ちょっと映画におけるメッセージ性の強さに疲れてしまっている最近なので、マジでこれは負荷ないストレートなラブコメで良かったです。

 

いや~~あやうくシンウルトラマンまで何も観られないインポテンツとして生きるのかと思いましたね(シンウルトラマンは観る)(オタクだから)

ほなまた来月、生きてお会いしましょう。さよなら~

2022年1月後半から2月に観た映画の話をする

あんま観てないな

◆ ◆ ◆

 

『マニアック・ドライバー』

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愛車である黒のプレジデント・ソブリンと同じ色のドライビンググローブをはめた、タクシー運転手のフジナガ。ある忌まわしい出来事によって絶望の淵に落とされたフクナガは、狂気にとりつかれ、最高の生贄と呼ぶに相応しい女を殺して自分もこの世界から消えてしまうことを望んでいた。ある夜、ついに「生贄」を発見したフクナガは、密かに彼女をつけ回し、住所を突き止めることに成功する。

マニアック・ドライバー : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

MANIAC DRIVER-映画『マニアック・ドライバー』公式サイト (maxam.jp)

バイオレンスノワールと謳われているけれども、それ以上にジャッロ的性格の強いハレンチエログロ映画。

まずこのポスターの昭和オマージュから察しの通り、作中ではおおよそ2021年に製作されたとは思えないほどピンクでグロくてハレンチな絵面が続いて、まさに笑いとエロは紙一重。なんで風俗嬢でも最近は着ないスケスケ下着を自宅で着てるねん。なんで唐突に真剣で斬り合って乳首舐めて騎乗位やねん。バニーやねん。で、オムツかい。まあ出し惜しみをせずに乳首が出る。乳房はまだしもこんなに乳首観たの久しぶりかもしれん。
女は殺されるために自ら準備をして薄着になり乳を放り出して、エクスタシーを感じながら殺人の恐怖に戦く。THE低予算映画であるがゆえに偏執的な殺人の様子がジャッロとしてうすらキモく輝いていて、要するに、丸尾末広などを好む人間が好きな感じのピンクい映画。
いや、でも、わかるよ。私ももしスリラー映画を撮るとしたら、おおよそ2022年に製作されたとは思えないほどピコピコテロテロしたシンセサイザーをBGMにしたいもん。ロマンじゃん。
いやあ、本当にポスターが良い。ほしいな。

 

『決戦は日曜日』

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とある地方都市。地域に強い地盤を持つ衆議院議員・川島昌平の事務所で私設秘書として働く谷村勉は、川島のサポートに徹する仕事に満足していた。ところが、衆議院解散のタイミングで川島が病に倒れてしまう。次の選挙で川島の地盤を引き継いで出馬することになったのは、川島の娘・有美だった。世間知らずで自由奔放だが熱意だけはある有美に振り回されながらも、彼女を当選に導くべく奔走する谷村だったが……

決戦は日曜日 : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

映画『決戦は日曜日』オフィシャルサイト

一生懸命落選しようとする宮沢りえが良いッ

最初は宮沢りえ演じる有美の性格をうざったく感じて、ばかだなあと思いながら観てしまうけれど、徐々に有美の正常性と政界のまっすぐな異常性のコントラストがにじみ出てきて感覚がぐわぐわと揺さぶられてくる。コメディ映画におけるシニカルさのお手本のような、非常にきれいな塩梅の映画。
いや本当にコメディにおけるシニカルはこれくらいがすごくちょうどいいんですよ。本当に。観ていて「ちょうどよ~~~~~」と言いたくなっちゃうくらいちょうどいい。正常的な異常さと異常な正常さがコミカルな空気にうまくなじんで、そこから、ラストのまるで悪鬼羅刹か魑魅魍魎のような笑い声が下からのぼり迫ってくるところの、ゾッとする気味悪さにうまく響いている。窪田正孝にしか演じられないのでは?と思うような事なかれ主義の脱力秘書がピカイチ。

ラスト、ちょっとやっぱり気味が悪いね。

 

バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ

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巨大複合企業「アンブレラ社」の拠点があるラクーンシティの孤児院で育ったクレア・レッドフィールドは、「アンブレラ社がある事故を起こし、そのせいで街に異変が起きている」という不可解な警告のメッセージを受け取る。不審に思いラクーンシティに戻ってきたクレアだったが、ラクーン市警に勤める兄クリスは、クレアから聞いたその話を単なる陰謀論だとあしらう。しかし、やがて2人は変わり果てた姿の住民の姿を目にし、アンブレラ社が秘密裏に人体実験を行っていたことを知る。

バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

映画『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』 オフィシャルサイト | ソニー・ピクチャーズ

バイオハザードというゲームの実写化」という感じの本作。

実際に完全な再現度で言えば原作ファンとしては納得のいかないところも多々あるでしょうが(色々配慮して黒人になったりしているので)、とはいえミラジョボビッチのバイオハザードが「ミラジョヴォヴィッチのバイオハザード」過ぎるので、今回は予想以上に良い意味でゲームライクな演出に、個人的には大満足でした。ミラジョヴォヴィッチのバイオハザードも、それはそれで味わい深くて好きではあるけども。

バイオハザードっぽい、ということは、それだけホラー文脈が強いということで。得体の知れない「恐怖」が徐々に世界を侵食していくその薄気味悪さ、ゾンビたちの生々しい造形、ゲームにおけるステージ制を映画に落とし込んだことで映像でも際立つ閉塞感。若干スナック的なきらいもありますが、でも、そこも含めてバイオハザードの「良さ」なのでね。

原作を知らないひとでもホラー映画・ゾンビ映画として楽しめるギミックが多く、それはもちろん原作をなぞっているからではあるのですが、今回の脚本監督がヨハネス・ロバーツだからというのも大きいと思う。

『海底47m』シリーズで遺憾なく発揮した、サメ映画にホラーの構造を落とし込む上手さ。
このシリーズは、サメ映画といえばナチスに並ぶおバカ題材として完全に定着してしまって油断してしまうところもあるけれど、サメ映画つまりはモンスターパニックというものは大前提として「恐怖」なんだぞ!!という根本をハッと思い出させてくれる名作でしたね。とにかく、ともすればウケちゃう感じの設定をきちんと「怖く」描くその技量に、うめぇな~~と当時思っていたのですが、本作バイオハザードでもそれがちゃんと出されていて、私は非常に満足でした。

観た人にはわかるだろうけど、洋館序盤でのパッパッというフラッシュ演出が、めちゃくちゃ海底47mでしたね。へへ。

 

『ノイズ』

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時代に取り残され過疎化に苦しむ孤島・猪狩島。島の青年・泉圭太が生産を始めた黒イチジクが高く評価されたことで、島には地方創生推進特別交付金5億円の支給がほぼ決まり、島民たちに希望の兆しが見えていた。しかし、小御坂睦雄という男の登場によって、島の平和な日常が一変する。小御坂の不審な言動に違和感を覚えた圭太と幼なじみの猟師・田辺純、新米警察官の守屋真一郎の3人は小御坂を追い詰めていくが、圭太の娘の失踪を機に誤って小御坂を殺してしまう。3人はこの殺人を隠すことを決意するが、実は小御坂は元受刑者のサイコキラーであり、小御坂の足取りを追って警察がやってきたことで、静かな島は騒然とする。

ノイズ : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

映画『ノイズ』オフィシャルサイト

思ってたんと若干違ったけどふつうに面白かった。

私はOTAKUであるがゆえに「幼なじみによる死体の隠蔽、その閉塞感と秘密の共有」を目当てに観に行ったので、「思ってたんと若干違う」となったのですが、ごろごろ転がるようにどうにもならず加速していく状況と焦燥、追い詰められていく息苦しさ、そういったものが描かれていて良かったです。含みを持たせる終わりも嫌いじゃない。

途中のドミノ状態のあたりは面白くなってしまいましたが(褒めています)、苦しくなりすぎずにエンタメとして消費できるほどよい塩梅の映画でした。

殺人犯が結構ちゃんとキモいのもリアルに嫌悪感をもよおして良かったです。きも!

 

『TUBE』

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暗く狭いチューブの中で目を覚ました女。腕にはカウントダウンを表示するブレスレットが取り付けられていた。訳の分からぬままチューブ内を移動すると、別のチューブにたどり着く。チューブはまた別の空間に繋がっており、迷路のように入り組んでいる。しかも各チューブには恐ろしいトラップが仕掛けられ、考える間もなく次々と恐怖が襲いかかる。彼女は出口を求め、延々と続くチューブをさまようが……。ヒューマントラストシネマ渋谷&シネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち2022」上映作品。

TUBE チューブ 死の脱出 : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

http://www.at-e.co.jp/2021/tube-1

「あえ!そういう話!!?」と中盤あたりでなります。

ストレートな名作というわけではないけど、『未体験ゾーンの映画たち』として正解の映画。
デストラップも欲張りセットで、マジでこんなん嫌なんやが・・・・・と思わされる展開が一生続く。例えば『SAW』シリーズの後半のデストラップは技巧的でアクロバティックすぎて「すげー」という感想が先立ってしまい、嫌悪感は特にないのですが、本作のデストラップはリアルに「いてててて」となる感じのやつ。映画で腕ぶったぎられるシーンは直視できるけど爪剥がすシーンは直視できない、そういうアレです。

不条理系が苦手な人からすれば絶対に納得いかない映画だろうけれど、私は不条理大好きなので楽しめました。

個人的には、TUBEが母体の胎内を暗喩していて、主人公の女性の生まれ直し(生き直し、再生)のメタファーなのかなあと思っています。

 

『キラー・セラピー』

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1人の少年が殺人鬼へと育っていく姿を描いたスリラー。ブライアンは両親の愛情を養女である妹に奪われ、怒りをあらわにする。息子の凶暴性を危惧した父親は病院に連れて行くが、繰り返される恐ろしいセラピーはブライアンの精神をむしばみ、闇の世界へと引きずり込んでいく。出演は「バタリアン」シリーズのトム・マシューズ、リメイク版「ハロウィン」のダエグ・フェアーク、「13日の金曜日」のエイドリアン・キング。監督・脚本は「ペイシェント・セブン」の脚本を手がけたバリー・ジェイ。ヒューマントラストシネマ渋谷&シネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち2022」上映作品。

キラー・セラピー : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

 

最初のセラピストが諸悪の根源やないか!!!!

私はてっきりゴッサムシティのさらにスラム以下に住まうような治安おしまい倫理観バグりちらかしてる家族(と環境)で育ったサラブレッドサイコパス育成記録かと思っていたのですが、そうではないし、意外と主人公がおばか。天使のツラして中身が狡猾で大人を欺くタイプの子供ではないし、そのぶん人間味もあって「ああ~~~~たぶんこの子病名がつくから子供のときにまともな医者にあたって適切な治療を受けていればそこそこふつうに社会で生きていけただろうに~~~~~」となります。そして冒頭の、某セラピストへの苛立ちが募る。

とはいえ殺人を犯して以降の主人公の犠牲者および周辺人物は全然非がなく、特にあの女の子の彼氏はムーヴがいじめっ子っぽいだけで言動はめちゃくちゃ正論。ブライアン、おまえキモイぞ!!

 

監督、「うんうん、そうだね、じゃあ今日もお薬出しておくからね」とものの数分で話を終えていつもの薬を出すだけの精神科医になんかムカついてんだろうな~~、と思いました

 

『真・事故物件 本当に怖い住民たち』

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血まみれのゴア、スプラッター、残虐描写を限界まで満載して描いたバイオレンスホラー。「事故物件に住み込み、幽霊をカメラに収めるまで帰れない」という企画の番組に無理やり参加させられた、YouTuberとアイドルの卵たち。史上最も凄惨と言われたバラバラ殺人事件の現場だったアパートに暮らし始めた彼女たちを待ち受けていたのは、おぞましい悪霊だけではなかった。やがて、彼女たちは想像を絶する恐怖と苦痛の数々に直面する。オカルトメディアの「TOCANA」が製作した作品で、数々の短編スプラッター映画で注目を集めた佐々木勝己監督がメガホンをとった

真・事故物件 本当に怖い住民たち : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

映画『真・事故物件』公式サイト

さいっこ~~~~~~~~~!!!!!!!

言葉では何が最高か言い表せない。とにかく見てほしい。とにかく最高。

まず大前提としてホラーとして出来がいい!!
それでいてゴアも気合が入っている!!
味変に次ぐ味変!!(本当は味変あるって知らずに見てほしいからこの発言をすることで私はフォロワーの楽しみを少し奪っているんですけどとにかく最高なので言わずにはいられないんです)

ちゃんとホラーなのでホラー苦手な人は観に行きにくいかもしれませんが、この映画を観た人間は全員ニッコニコで劇場を後にすること、間違いないです。ありがとう、本当にありがとう。

なんかもう何が最高かはわからないけどエンディングも最高!!!!

私は自分の人生が終わるときにでっかく「終劇」と出てほしい人間なので(?)

いやあほんとうに私はこういう「体験」がしたくて映画を観ているんです!!!!エンタメに人生救われてる~~~!!少なくとも2月にして上半期ナンバーワン出ちゃったかもしれない。

唯一の難点はこのあと他の映画を観ようとしても「面白くても、でも真事故物件より面白いということはないだろうしな・・・・・」となってしまう点です。3/13時点、まだ何も見ていません。『ハングリー』は観たい。

そして続編決定、ありがとう!!!!!!!!人生かなり助かっている。

◆ ◆ ◆

ニート・オブ・ザ・デッド』

ゾンビが蔓延した世界を舞台に、家族とは何かを問いかけた異色のホームドラマ。街中を徘徊するゾンビたちから身を守るため、一軒家で籠城をはじめた家族。ところが、引きこもりの息子がゾンビになっていることが判明する。息子の扱いをめぐり、家から追い出そうとする父親とこのまま同居しようという母親が激しく対立する。

ニート・オブ・ザ・デッド : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

邦画のゾンビものが観たくて、木下ほうかも出ているし見てみようかなと軽い気持ちで鑑賞。長さもちょうどよく、ほぼ家の中だけで話が進んでいく、ゆる~くブラックなテンポにくすりと笑わされ、日本の家庭環境を凝縮したような一家がゾンビ世界を通してしっちゃかめっちゃかになり最後はひとつのエンディングを迎える様がおかしくもアットホーム。予想していたよりよき映画でした。

 

健太郎さん』

一軒家で暮らす4人の家族、斎藤家には赤の他人、"健太郎さん"が同居している。奇行を繰り返す彼は一体誰なのか、その目的は。一つの真実にたどり着いた時、想像を絶する絶望が姿を現す。ノンストップホラーサスペンス

Amazon.co.jp: 健太郎さんを観る | Prime Video

年末年始にアマプラでなんか観たい!とツイッターで言っていたら教えてもらった本作。短いので見やすいし、世にも奇妙な物語系の映画なので、不条理系が好きなひとにはきっとドンピシャ。脚本自体はわかりやすくシンプルでありながら、「健太郎さんって何者なんだ?なにかのメタファー?」という謎解きの快感も押えていて、そして少し考えてみると色々と考察も出来て非常に楽しい作品。

健太郎さんが一家に寄生するに至ったそのきっかけ、それ自体も作中のさまざまな些細なヒントを組み合わせていくと、もしかして……なんて想像が膨らんでしまう。

よき映画でした。

2022年1月前半に観た映画の話をする

気づいたら新年あけましておめでとうございます。

 

 

『ただ悪より救いたまえ』

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凄腕の暗殺者インナムは引退前の最後の仕事として、日本のヤクザ・コレエダを殺害する。コレエダの義兄弟だった冷酷な殺し屋レイは復讐のためインナムを追い、関わった者たちを次々と手にかけていく。一方、インナムの元恋人は彼と別れた後にひそかに娘を産みタイで暮らしていたが、娘が誘拐され元恋人も殺されてしまう。初めて娘の存在を知ったインナムは、彼女を救うためタイへ急行。そしてレイもまた、インナムを追ってタイへとやって来る。2人の戦いは、タイの犯罪組織や警察も巻き込んだ壮大な抗争へと発展していく。

ただ悪より救いたまえ : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

映画『ただ悪より救いたまえ』オフィシャルサイト

何かと聞かれたら「いつものやつ」、そういう映画。以上だ!!

「そういうの」がほしくて観てみたらちゃんと「そういうの」が出てくる。一定のクオリティを保つ、もはや韓国お家芸とも言えるバイオレンスノワールもの。韓国映画の哀愁おじさん、必ず死ぬ。(相棒の若い男がいるときは別)

本当に上記の感想しか出てこないくらい「そういうの」なのですが、これはかなり褒め言葉で、アクション・バイオレンス・爆発・ストーリー、なにをとってもきちんと仕上げられていて、多少の脚本の粗は気にさせないバイオレンスノワール映画として十分なもの。
韓国のノワール映画の何が良いって、「ちゃんと汚い」ところ。
物理的な意味で、流れる血がべとべとして生ぬるそうに映し出されている。全体的な湿った汚い暴力的描写が完璧。(貶すわけでは決してないが)例えばハリウッド映画での暴力描写の平均値と比べると一線を画して明らかに汚くてうっすら気持ち悪くて妙に生々しい人肌の温度感がある、そういうバイオレンス。電車で知らない人と腕が触れあったときのゾッとする感じ、あれに似た生理的嫌悪を抱かせる、生ぬるい温度感。だいすきだ。

あとレイがピッタピタのGUCCIのインナー着てるのが「そういう人」というリアリティがあってかなり好きです。レイ、全然下手じゃないけど、めっちゃ「気持ちいい」と「なんかキモい」の境界線みたいなセックスの前戯しそう。伝わってほしい。

 

『アンテベラム』

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人気作家でもあるヴェロニカは、博士号を持つ社会学者としての顔も持ち、やさしい夫と幼い娘と幸せな毎日を送っていた。しかし、ある日、ニューオーリンズでの講演会を成功させ、友人たちとのディナーを楽しんだ直後、彼女の輝かしい日常は、矛盾をはらんだ悪夢の世界へと反転する。一方、アメリカ南部の広大なプランテーションの綿花畑で過酷な重労働を強いられている女性エデンは、ある悲劇をきっかけに仲間とともに脱走計画を実行するが……。

アンテベラム : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

https://antebellum-movie.jp/

『ゲットアウト』より強烈で、『アス』よりはエンタメ寄り。あらすじは読まずに観た方が絶対に楽しめるので、あらすじの書き方をミスっていると思う。脚本の転換部を書いちゃだめなのよ。
内容としては「ゲットアウトで、アスです!」という感じだし、作品情報を見た段階でどのような映画であるかは大体察しがつくかと思いますが、それにしても二重の意味でかなり強烈な作品。

ともすればブラックユーモアにもなりそうなくらい過激に誇張して設定された舞台装置と、それをあますことなく存分に使って披露される地獄。
あるいはまるで寓話のように物語は展開され、ありえない設定のありえない過激な舞台はめちゃくちゃに破壊されていく。
おそらくあえて、過ぎるほどの過剰な演出をしていますが、それでも日本人である私には「え、これって逆に大丈夫?アリなの?」と思ってしまう怒濤の後半戦。

でもこういった作品が作られて世に提示されてその存在を肯定されているということは、かつてこの過激で過剰な地獄は確実に実在していて、その地獄は未だに尾を引いているということなんだろうなあと、寓話のようにありえない設定を観ながら考えたり。
最後までずっと「アリなのかこれは、本国で逆にめちゃくちゃ批判されてないのか、」と思ってエンドロールを眺めていましたが、どう……なんですかね……実際……批判が一切ないのは怖いから賛否両論あってほしいとも思う。両論ありきでこういった演出をしていると思うので。

スリラーとしても秀逸。謎がバババッと種明かしされていく終盤はエンタメの快感があります。

(すこしネタバレのようになりますが)

農園で労働をさせられるエデンと裕福で活動家のヴェロニカ、当初は同一人物だとすぐには気付けなかったくらい、立場が異なるときの表情が全く違う。化粧や服装の差はもちろんあるけれど、ヴェロニカの都会的な表情とエデンの虐げられる者の表情が、たとえ同じ服装をしていても一見して分かるくらいに、明らかに異なっていて別人状態。役者ってすごいな。

 

『弟とアンドロイドと僕』

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孤独なロボット工学者・桐生薫は幼い頃からずっと、自分が存在している実感を抱けないまま生きてきた。そしてその不安を打ち消すため、彼は古い洋館で、自分そっくりな「もうひとりの僕」のアンドロイド開発に没頭している。そんな彼のもとに、ずっと会っていなかった腹違いの弟が訪ねてくる。寝たきりの父親や駅で出会った謎の少女など様々な者たちが交錯する中、桐生と「もうひとりの僕」の間には、ある計画があった。

弟とアンドロイドと僕 : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

弟とアンドロイドと僕 | キノシネマ kino cinéma 配給作品

トヨエツの演技がマジで良い~~~~~~~

阪本順治監督の「自身の人生観や思索の後が色濃く反映した禁断の問題作となっている」というだけあって、私小説的雰囲気の濃い作品。
難解!!というわけではないけど、主人公・桐生の存在のように、どこかつかみ所がなく頼りようのない雰囲気がすごくこちらを不安にさせてくる映画。

画面いっぱいの陰鬱な雰囲気と冒頭から結末まで一切止むことのない雨、かつての暖かく華やかな時代の記憶を残すことがいっそもの悲しさを加速させる古い洋館と医療器具、とにかく終始画面に漂う空気感が「誰かの死に際の走馬燈を一緒に見せられている」ような感覚にさせる。

私は観ていてなぜだか凄く悲しくなってしまって、真冬の夜の帰り道で心がぶわぶわと不安になっていました。はやく帰って布団にくるまりたいよ~~……となる映画(そうかな)

「私は何者か」「本当に私は『ここ』に『いる』のか」という問いは人間が人間であるときからずっとつきまとってきたもので、高名な哲学者から夜に眠れない思春期の子供までみんなその普遍的で不変的な問いに悩まされてきて、この映画は監督自身がその問いに対してひとつの踏ん切りをつけたくて作ったのかもしれない。

なので本作で提示される思想とひとつの結末は、受け入れがたい人もいるだろうとは思うけど。なんにせよトヨエツの演技はマジで良い。

(以下少しネタバレ)

 

で、例の少女の正体って結局何なのか。恐らく「正体」とか野暮ったいことを言ってはいけないと思うし、彼女が本当にラストで示唆されるようにアンドロイドなのかどうかは“本質的”にはどうでもよくて、「何者であるかもしれないし、何者でもないかもしれない」という存在でもただ抱きしめあうことはできる(他者とのふれあいをもってして、たとえ自己がどのようなものであれ、いまここで確かに存在は確立される。……かもしれない)という結論なんだろうか?と私は思っていますが。

個人的には、無垢な少女にメッセージ性が託される形式に飽いているのも本音ではありますが。いい加減、2022年にもなってそういうのってどうなの、だって毎回「少女」じゃん、神聖さと透明性を見出されるのはいつも「少女」じゃん…………という。そこにお腹いっぱいな感じがあるのでラストに少し思うところはありますが、でもトヨエツの演技がマジで良いし、陰鬱な雰囲気がすごくすきなので、不安な気持ちにさせられるところも含めて結構好みな映画でした。

にしても誰も傘ささなさすぎ。

 

『レイジング・ファイア』

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正義感あふれる警察官チョンは、麻薬組織の壊滅作戦中に謎の仮面をかぶった集団に襲撃され、仲間を殺されてしまう。やがてチョンは、事件の黒幕が3年前に警察組織にはめられ投獄された元同僚ンゴウであることを知る。チョンは自身にとって弟子のような存在だったンゴウと、激しい攻防を繰り広げるが……。

レイジング・ファイア : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

映画『レイジング・ファイア』公式サイト

まだ1月ですが、おそらく「2022年いちばん映画館で観なきゃいけない映画」ことレイジングファイアッッ!!
(ちなみにこれは良い意味でも悪い意味でもです。)

ストーリーについて、深く考えてはいけない。ここ数年で観た映画で圧倒的にいちばん「サブキャラ・モブキャラに至るまでマジで誰にも共感できない映画」「めちゃくちゃストーリーが薄くて雑な映画」。正直だんだんイライラしてきてしまうくらい誰にも共感できずすごく雑。私は空腹時に観てしまったせいでこうなったのでしょうが、いらちの人間が観たらおおよそイライラしてしまうと思う(関西人)
これはまあ悪口といえば悪口になってしまうけれど、ところがアクションが変態級の仕上がりのため、逆に味が増す!!これで人間ドラマも重厚に描かれていたら濃厚こってり超ド級家系ラーメンみたいになって胃もたれ間違いなしだっただろうけど、人間ドラマが限りなく「最低限のやつを限界まで引き延ばしました」みたいな感じだから、アクションにものすごく集中できる。

アクションにリアリティは一切ない。なにもかもがありえない。そのありえないアクションが舐めるような画角で余すことなく映されて、なんかわからんけど変態みたいにヤバイ仕上がりになっている。映画館で観ろ、マジで!!!!映画館で観ないと魅力が半減しちゃうよ~~という映画は多くあるけれど、この映画は半減どころの騒ぎじゃないので。

(以下少しネタバレ)

特に最終戦。肉弾戦で相手の顔を掴んで机などに押しつけて横にズザザザッとスライドさせるアクションはよく観るけど、それをグランドピアノでやることによって音色を奏でているのが、凄かった。良い意味でかなり気持ち悪い。野蛮で血まみれな肉弾戦のなかで、美しくも悲鳴のようにも聞えるピアノの旋律が鳴り響き、次の瞬間には目つぶしというTHE野蛮さ。からのマリア像が倒れてきてピアノを壊して鍵盤が断末魔のようにッジャーーーーンと音を立てて、崩壊する。この一連がほんの10秒20秒で行われて、こういう「とんでもない固執を感じさせるヤバアクション」がずっと続いてる。やべーわ。これで人間ドラマを緻密に描かれたらカロリー高すぎて耐えられなかったから、この塩梅で良かったんだよ。

ちなみにエンドロールではほろりとしてしまいましたね。

 

ところでドニー・イェン、スーツの下にどうやってその筋肉を収納していたのか教えてほしい。質量保存の法則が効かない男?

 

『ドント・ルック・アップ』

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おちこぼれ気味の天文学者ランドール・ミンディ教授はある日、教え子の大学院生ケイトとともに、地球に衝突する恐れがある巨大彗星の存在を発見し、世界中の人々に迫りくる危機を知らせようと躍起になる。仲間の協力も得て、オーリアン大統領とその息子で大統領補佐官のジェイソンと対面する機会を得たり、陽気な朝のテレビ番組「デイリー・リップ」に出演するなどして、熱心に危機を訴えてまわる2人。しかし人類への警告は至難の業で、空回りしてばかり。そのうちに事態は思わぬ方向へと転がっていき……。

ドント・ルック・アップ : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

コミカルでシニカルでブラックで、変化球なのにどこかストレートな、終末譚。
地球が滅びるという局面になってもセレブのゴシップに夢中な人間たちと、全然清くも正しくもなければマッチョでもない主人公たちが必死に奔走する姿が、ブラックユーモアでシニカルながらもまっすぐで、わりと笑っては観ていられない。私もいざ地球に隕石がぶつかるとなっても、それより前澤社長のお金配りのほうが気になるし、ずるければ株とか買い占めてしまう気がする。

結局地球が滅亡しない地球滅亡ものに少々飽いてしまったところがあるので、ちゃんと地球が滅亡する終末譚、サイコーです。ブラックでユーモラスな大筋と、終盤の家族で囲む団らんに象徴されるような真摯さが溶けるように融合していて、おもしろおかしくなりすぎず、かといってしんどくなりすぎない、非常に良いバランスで成立している映画。私自身がオタクとして終末譚チックな二次創作をしがちな人間なので、ほんとうに、終末、サイコ~~~~~

ちなみに本作はネトフリ配信に先駆けて映画館で上映されたけど、展開のスピーディーさが非常にネット配信サービスらしいというか。やはり近年、「掴みが大事!前置きはいいからさっさと始めるぞ!!」という序盤の映画がかなり増えた印象。冗長だとスキップされちゃうからねえ。

 

『コンフィデンスマンJP 英雄編』

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かつて悪しき富豪たちから美術品を騙し取り、貧しい人々に分け与えた「ツチノコ」という名の英雄がいた。それ以来、当代随一の腕を持つコンフィデンスマンが受け継いできた「ツチノコ」の称号をかけ、ダー子、ボクちゃん、リチャードの3人がついに激突することに。地中海に浮かぶマルタ島の首都で、街全体が世界遺産に登録されているバレッタへやって来た彼らは、マフィアが所有する幻の古代ギリシャ彫刻「踊るビーナス」を手に入れるべく、それぞれの方法でターゲットに接近。そんな彼らに、警察やインターポールの捜査の手が迫る。

コンフィデンスマンJP 英雄編 : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

映画『コンフィデンスマンJP 英雄編』公式サイト

相変わらずコンフィデンスマンJPな映画です。それ以外の感想は、とくに、なし。

緻密に計算された脚本を求めている人間はそもそもコンフィデンスマンJPを観ないと思うので、このちょっと粗っぽくて大味でやたらスケールのでかい感じを楽しむのがこのシリーズの醍醐味。とはいえプリンセス編はさすがに雑すぎた印象があったので、本作はロマンス編くらいには持ち直していてくれてよかったです。まあめちゃくちゃ大味なんだけど、その雑把な感じを楽しみたくて観ているので。

赤星さんどんどん萌えキャラになっててかわいいね。なんだかんだで次回作もあったら観ちゃうよ。そういう妙な良さがあるよね、このシリーズは。

 

 

 

年末年始にかけてアマプラやネトフリで観られるおすすめ映画をフォロワーに色々教えてもらったにも関わらず、一度もサブスクを開きませんでした。惰性でYouTubeを開き、ずっと知らない社畜のモーニングルーティンとかを観ている。惰性。脳死
元々、映像という他者のペースで展開される媒体が苦手なので、オタクのくせにとんとアニメに縁がなく、本は読めても映画やドラマは見られない人間なのですが(とくに映画は長すぎる!)、それゆえ『映画館』という強制的にそれを観る他なにもできない空間・時間を金で買っています。が、近年それが顕著になっている。何も考えたくなくてとろけそう。たすけてーーーー

未体験ゾーンの映画たち しか人生に楽しみがないです

2021年にこんな映画も観ていたというまとめ

2021年中に観ていたけどなんか書き忘れていた作品がちょこちょこあったので、半券を見返したりしながら、内容をなんとなく覚えているものだけ振り返っていったりします。なんて言うと、年末感がすごいな。師走にちなんで、駆け足です。(つって書いてたが、年を越してしまいましたね

ちなみに以下は下書きにあったやつです。

とんでもねえ異常気象にも慣れつつある令和。暑かったり涼しかったり暴風雨だったり真夏日マックスだったり、ただでさえ盆に終戦に湿気にと陰鬱でくらくて妙に惹かれてしまう日本の夏がよくわからねえことになってますネ。

私はそんな夏に振り回されているのか、そう言い訳をつけて精神を甘やかしているのか、躁鬱がそこそこの度合いに達して映画を全然観ていません。フィクションに2時間も集中ができないし、エンドロールの空虚さに耐え切れそうにない。
エンドロール、ひどくないですか?あれだけ私を取り込んで世界が存在していたのに、その先にも登場人物たちの人生は続くのに、2時間が過ぎれば途端に「はいおしまい!フィクションなので!」と私を突き放して、世界が遮断されるじゃないですか。ずるいよ~~。でもそんなになるまでゼロから世界を構築できるのは凄いし、そのために膨大な人数のスタッフが関わっているのだと認識できるエンドロールは、空虚で最悪で私を遮断するくせに、フィクションの余韻を漂わせる最高の装置です。つらい。なにいってるかわからなくなってきた。

どうやら私はそんな夏の所感だったらしい。

 

 

ゴジラvsコング』

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ハリウッド版「ゴジラ」シリーズの「GODZILLA ゴジラ」(2014)、「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」(19)と、「キングコング:髑髏島の巨神」(17)をクロスオーバーして描く「モンスターバース」シリーズの第4作で、ゴジラキングコングという日米の2大怪獣が激突する。モンスターの戦いで壊滅的な被害を受けた地球。人類は各地で再建を計り、特務機関モナークは未知の土地で危険な任務にあたりながら、巨大怪獣のルーツの手がかりを掴もうとしていた。そんななか、ゴジラが深海の暗闇から再び姿を現し、世界を危機へ陥れる。人類は対抗措置として、コングを髑髏島(スカルアイランド)から連れ出す。人類の生き残りをかけた戦いは、やがてゴジラ対コングという未曽有の対決を引き起こす。監督は「サプライズ」やNetflix実写版「Death Note デスノート」などを手がけたアダム・ウィンガード。出演はアレクサンダー・スカルスガルドレベッカ・ホール、「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」から引き続き登場するミリー・ボビー・ブラウンカイル・チャンドラーほか。また、「GODZILLA ゴジラ」「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」で渡辺謙が演じた芹沢猪四郎博士の息子・芹沢蓮役で小栗旬が出演し、ハリウッドデビューを飾った。

ゴジラvsコング : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

映画『ゴジラvsコング』公式サイト

 

観る前のわたし「うちのゴジラがでっけーゴリラごときに負けるわけないのだか??笑笑笑」

 

観ているわたし「ゴジッ…ゴジラー!いけ!コング!やれ!負けるな!ウォーー!ウォ……?あっ……あー!ウォーー!ゴジラ!コング!(泣)」

 

やった~~~~~~!!!!!バカな映画のバカなシリーズのバカな最新作だ~~~~~!!!観てました!忘れてた!忘れるな!たぶん脳内で映画ではなくプロレスにでも分類してしまったのかもしれない。
な~~~んも難しいこと考えなくてE~~~!がばがばの人間にがばがばの世界観、とにかく「な~んかかっけ~っしょ!!(^-^)」というロマンしかない!そこまで自分の「な~んかかっけ~っしょ!!(^-^)」を信じて製作できるのは凄いな、私もそんな風に生きてみたいな、そんな気持ちになりました。


内容については小難しいことが一切ないので特に言及することはないのですが、ラストシーンの「でっけー借りができちまったな」みたいなヤンキー漫画ライクの表情がたまらなくいとおしかったです。

 

ちなみに私は家に『黄龍の村』やら『サスペリアpart2』やら『ヒッチャー』やら『スカイライン逆襲』やらなんやらのポスター類を金色の額縁に飾って悦に浸っているのですが、このゴジラシリーズ(とくに髑髏島)のポスターが飾りたくてたまりません。どなたか髑髏島日本版ポスターを見つけたら教えてください。お願いします。

 

『RUN ラン』

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パソコン画面上でドラマが展開するという新機軸で注目を集めたサスペンススリラー「search サーチ」のアニーシュ・チャガンティ監督が、母親の娘への歪んだ愛情の暴走を描いたサイコスリラー。郊外の一軒家で暮らすクロエは、生まれつきの慢性の病気により、車椅子生活を余儀なくされていた。しかし、前向きで好奇心旺盛な彼女は地元の大学への進学を望み、自立しようとしていた。ある日、クロエは自分の体調や食事を管理し、進学の夢も後押ししてくれている母親ダイアンに不信感を抱き始める。そして、クロエの懸命な調査により、ダイアンが新しい薬と称して差し出す緑色のカプセルが、けっして人間が服用してはならない薬であるということが判明してしまう。クロエ役をオーディションで抜擢された新人女優キーラ・アレン、母ダイアン役をドラマシリーズの「アメリカン・ホラー・ストーリー」のサラ・ポールソンがそれぞれ演じる。

 RUN ラン : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

映画『RUN/ラン』公式サイト 6月18日(金) TOHOシネマズ 日本橋他全国ロードショー

め~~~~っちゃおもしれ~~
スリラーとして実に一級で、とにかくちゃんと正統派に面白いので、スリラーに飢えている人間は今すぐに観てほしい。

病気がちな車椅子の娘が母親に囚われるという、精神的にも肉体的にも追いつめられる二重のスリラーなのですが、健常者であればなんでもない程度のことが(精神的にも肉体的にも)娘にとっては檻となり、自身をきつくとらえてくる。
ミニマムな地獄と呼ぶべきか、そのまるで掌サイズの牢獄がどこまでも続いていて、日常の些細な疑念から始まった脱出劇は狭い世界のなかで恐ろしいほどに押し広げられ転がるように展開していく。緩急のつけ方が非常にうまくて、ほっと一息ついたと思ったら……!!というアップダウンがこちらを息苦しくさせてくる。

とにかくちゃんと正統派に面白いです。病院終盤の「逆襲」も、やりすぎないラインで娘の圧倒的勝利を描き切っていて、秀逸でした。こういうのでいいんだよ。

 

ザ・ファブル 殺さない殺し屋』

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南勝久の人気コミックを岡田准一主演で実写映画化した「ザ・ファブル」のシリーズ第2作。裏社会で誰もが恐れる伝説の殺し屋ファブル。1年間誰も殺さず普通に暮らすようボスから命じられた彼は、素性を隠して佐藤アキラという偽名を使い、相棒ヨウコと兄妹を装って一般人として暮らしている。一見平和に見えるこの街では、表向きはNPO団体「子供たちを危険から守る会」代表だが裏では緻密な計画で若者から金を巻き上げ殺害する危険な男・宇津帆が暗躍していた。かつてファブルに弟を殺された宇津帆は、凄腕の殺し屋・鈴木とともに、復讐を果たすべく動き出す。一方アキラは、過去にファブルが救えなかった車椅子の少女ヒナコと再会するが……。岡田准一木村文乃佐藤浩市ら前作からのキャストに加え、宇津帆役の堤真一、ヒナコ役の平手友梨奈、殺し屋・鈴木役の安藤政信が新たに参加。前作に続き江口カンが監督を務めた。

 ザ・ファブル 殺さない殺し屋 : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

映画『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』公式サイト|大ヒット上映中!

アクションが凄いのは分かるし金かけてるのも分かるのですが、前作以上に「このすごいアクションを観てくれ!」という圧が凄すぎて、最重要の脚本演出がおざなりになっている印象。前作でそこが残念だったので今回払拭されていたら良かったのですが、「アクションをたのしむ映画」になってしまっていたな……というのが正直なところです。こんなにアクション頑張ってるのにどこかテレビサイズな印象を拭えないのはなぜなのか。
と色々言いましたが、肩の力抜いて気楽に観られる映画だし、決してつまらないわけではないので、お手軽に岡田准一のアクションが観たいときには非常に良いと思います。燃えよ剣とか観たら、しんどくなるし……。

最近の堤真一、ヤバサイコパス役多くないですか?

 

『サイコ・ゴアマン』

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カナダの過激映像集団「アストロン6」のメンバーで、「マンボーグ」「ザ・ヴォイド」の監督として知られるスティーブン・コスタンスキが監督・脚本を手がけたSFスプラッターアドベンチャー。庭で遊んでいた8歳の少女ミミと10歳の兄ルークは、太古の昔より地底に埋められていた悪魔「残虐宇宙人」をよみがえらせてしまう。銀河中から恐れられる残虐宇宙人の復活により地球は絶体絶命の危機に陥るが、光る謎の宝石をミミが手にしたことで、残虐宇宙人は彼女に絶対服従せざるを得なくなる。「サイコ・ゴアマン」と名付けられた残虐宇宙人は、子どものいたずらに付き合うハメに。その頃、残虐宇宙人の復活を察知した銀河系の怪人たちが、抹殺のため地球へと向かっていた。

 サイコ・ゴアマン : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

『サイコ・ゴアマン』オフィシャルサイト

PG!PG!PG!PG!PG!PG!PG!PG!PG!やった~~~~

ちゃちな特撮じみた宇宙人たちの造形が、それでいて細部までさりげに作りこまれていて、私の生まれる前のウルトラマンなんかをリバイバルしたような妙な懐かしさと安心感。作り手の愛と楽しさが存分に伝わってきて(このあらすじを書くヤツがつまらないわけがない)、最後までかぶりつきで観て笑って終われる素敵にサイコーな映画です。よく考えたらかなり邪悪な『ホームアローン』がクリスマス映画になれるなら、『サイコゴアマン』がクリスマス映画になってもええやろがい。
主人公ミミがめちゃくちゃに非道で邪悪で、残虐宇宙人も若干引いてるのがたまりません。全然改心とかせず、ナチュラルにずっと非道で良い。最終的に、今まで全然見たことないタイプの愛が生まれちゃうのもたまりません。映画は、「泣ける」「笑える」「キュンキュンする」「共感する」だけではない。こういう愛もあるねん。

 

『SEOBOK ソボク』

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永遠の命をもつクローンの青年と、彼を守ることになった余命わずかな元情報局員の運命を描いた韓国発のSFサスペンスドラマ。余命宣告を受けた元情報局員の男ギホンは、国家の極秘プロジェクトによって誕生した人類初のクローン、ソボクの護衛を命じられる。ところが任務開始早々、何者かの襲撃を受ける。からくも生き延びた2人だったが、人類に永遠の命をもたらす可能性を秘めたソボクの存在を狙い、その後もさまざまな勢力が襲ってくる。危機的な状況の中で逃避行を繰り広げるギホンとソボクは、衝突を繰り返しながらも徐々に心を通わせていくが……。「新感染 ファイナル・エクスプレス」のコン・ユが元情報局員ギホン、ドラマ「青春の記録」のパク・ボゴムがクローン青年ソボクを演じる。監督は「建築学概論」のイ・ヨンジュ。

 SEOBOK ソボク : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

映画『SEOBOK/ソボク』オフィシャルサイト 2021年7/16公開

予告やポスターで煽られているほどそんなに「君か、世界か――」ではない。

思ってるほどブロマンスでもない。ソボクが大体綾波レイなんだけど、想像よりもずっと普通の男の子で、それゆえ主人公の心が揺れ動かされたのは非常に分かるのですが…………おかあさんひどくない????親っていっつも身勝手だよな、すぐエヴァに乗れとか言ってくるし こっちまだ14歳やで ほんまによ

予告で煽られているほどブロマンスでもなければ世界規模でもないので肩透かしを食らった気持ちにはなりましたが、とはいえ終盤にかけての怒涛の能力戦の演出は見物。リトルナイトメア(ゲーム)のラストシーンみたいになっていましたね。あと相変わらず韓国のラーメンうまそう。

そんなに「君か、世界か――」ではないので、ブロマンスは期待せず、SFをふつうにみるつもりで鑑賞するのが最適解かと思われます

 

『オールド』

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シックス・センス」「スプリット」のM・ナイト・シャマラン監督が、異常なスピードで時間が流れ、急速に年老いていくという不可解な現象に見舞われた一家の恐怖とサバイバルを描いたスリラー。人里離れた美しいビーチに、バカンスを過ごすためやってきた複数の家族。それぞれが楽しいひと時を過ごしていたが、そのうちのひとりの母親が、姿が見えなくなった息子を探しはじめた。ビーチにいるほかの家族にも、息子の行方を尋ねる母親。そんな彼女の前に、「僕はここにいるよ」と息子が姿を現す。しかし、6歳の少年だった息子は、少し目を離したすきに青年へと急成長していた。やがて彼らは、それぞれが急速に年老いていくことに気づく。ビーチにいた人々はすぐにその場を離れようとするが、なぜか意識を失ってしまうなど脱出することができず……。主人公一家の父親役をガエル・ガルシア・ベルナルが演じ、「ファントム・スレッド」のビッキー・クリーブス、「ジョジョ・ラビット」のトーマシン・マッケンジー、「ジュマンジ」シリーズのアレックス・ウルフらが共演する。

オールド : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

映画『オールド』公式サイト

荒唐無稽。それに尽きる。なのに物語として成立していて、そしてめっちゃ面白い。

シャマラン監督の“フリークス”な味をランタイム108分で存分に味わうことができて、一生が一日で終わるというスピード感から飽きることなく物語が展開して、ずっと釘付けで観てしまった。
破綻しているはずの論理……そもそも成立させる気のないようなありえない論理はなぜか物語の上で奇妙なバランスで成り立っていて、「一生を一日で」終えるビーチで登場人物たちが外見だけでなく内面も成長し老いていって、人間のライフステージを僅か数十分で全て見せつけられたような凄みすらある。

それでいてちゃんと「キモイ」し「こわい」ので、めちゃくちゃ変なはずなのにスリラーとして成立してる。

ありえない荒唐無稽さを成り立たせる技量、やっぱスゴ

 

三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』

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1969年5月に東京大学駒場キャンパスで行われた作家・三島由紀夫と東大全共闘との伝説の討論会の様子を軸に、三島の生き様を映したドキュメンタリー。1968年に大学の不正運営などに異を唱えた学生が団結し、全国的な盛り上がりを見せた学生運動。中でももっとも武闘派とうたわれた東大全共闘をはじめとする1000人を超える学生が集まる討論会が、69年に行われた。文学者・三島由紀夫は警視庁の警護の申し出を断り、単身で討論会に臨み、2時間半にわたり学生たちと議論を戦わせた。伝説とも言われる「三島由紀夫 VS 東大全共闘」のフィルム原盤をリストアした映像を中心に当時の関係者や現代の識者たちの証言とともに構成し、討論会の全貌、そして三島の人物像を検証していく。ナビゲーターを三島の小説「豊饒の海」の舞台版にも出演した東出昌大が務める。監督は「森山中教習所」「ヒーローマニア 生活」の豊島圭介

三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実 : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

映画『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』公式サイト

私は文学部卒なので世間の平均値よりは少しだけ三島由紀夫に親近感があるのですが、とはいえ平成生まれZ世代(ギリギリそうらしい)の私にとって全共闘三島由紀夫学生運動も完全に教科書のなかの出来事。思想が強めな高校の同級生らが京大へ進学しなにやら「じみた」ことをしたりしなかったりしていることだけ知っていますが、とにかくめちゃくちゃに遠い出来事。でも少し前に70歳前後の知人と話していて、「大学の卒業試験がある頃は機動隊が入ってきてわちゃわちゃするって知ってたから、勉強しなかった。案の定試験はなくなって、みんななんとなく卒業した。学生運動の盛んな時期だったからね、俺は麻雀してたけどワラ」つってて、エ~~~~~~~~歴史じゃん!となりました。
というどうでもいい話を思い出しながらこの文章を書いていますが、本作は監督がこの狂乱を肌で知っている世代はないからか比較的観客的視座に近く、さほど三島由紀夫や歴史に詳しくなくても「ちょっと興味あるし観てみるか」のスタンスで十分楽しめるもの。言い換えれば、識者にとっては物足りなく感じてしまうかもしれないけど、当時の映像や関係者のコメントを通して映される「歴史」は、歴史という物々しさよりもエンターテインメントに近しい。とにかく、良い意味で軽い気持ちで観られるのが、よいです。ネ。

 

バトルシップ

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ハワイ沖の太平洋上で大規模な軍事演習を行っていた、アメリカを中心とした世界各国の護衛艦隊の前に、突如として正体不明のエイリアンの母船が出現。地球側の呼びかけ応じることなく、侵略を始める。演習に参加していた米海軍の新人将校アレックスや、アレックスがライバル心を抱いている海上自衛隊の指揮官ナガタらは、弱点もわからない謎の侵略者と相対することになる。

バトルシップ : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

どことなく雑な感じが否めないし脚本もオイッとなったりするが、スケールがでかいし映像が派手で気楽に楽しめる。浅野忠信がかっこいい。浅い感想しか出てこん。浅野だけに、ってな

 

ナチス第三の男』

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その非道さからヒトラーも恐れ、150万人を超えるユダヤ人虐殺の首謀者として絶大な権力を手にしていったハイドリヒ。その暴走を止めるため、チェコ亡命政府は2人の若き兵士を暗殺チームとしてプラハへ潜入させた。綿密な計画を立て、慎重に待ち続けること数カ月。ついに2人はハイドリヒ暗殺計画決行の朝を迎える

ナチス第三の男 : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

http://hhhh-movie.asmik-ace.co.jp/

クオリティも決して低くなく、むしろ映画として高品質であると思うのですが、なんとなく薄い印象を受けてしまう。というのは、おそらく、視点がさまざまに動くので個々人にズームした内面を描く厚みに欠けてしまう一方で、人間1人1人が無数に集合して作られる歴史というものを俯瞰的・体系的に描いているわけでもないという点に由来するのか。ただこえは「惜しいな~」という私個人の感情で、つまらないとかセンスが悪いとかそういう話ではないです。ベストセラー小説なので、そこは安心して観られます(長いものに巻かれる女)

ヒトラーの伝記物は世に大量にあるので、ちょっと珍しめのナチス伝記物を見られて満足でした。

 

『ロスト・バケーション』

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サーファーで医者のナンシーは、休暇で秘境のビーチにやって来た。時を忘れ、日が暮れるまでサーフィンを楽しんだナンシーは、海中で突然何かにアタックされ、足を負傷してしまう。なんとか近くの岩場にたどり着いたナンシーは、岩の周囲を旋回するどう猛で危険な存在が自分を狙っていることに気がつく。岩場から海岸までの距離はわずか200メートルだが、時間とともに潮が満ち、海面が上昇。足下の岩場が沈むまでの時間は、わずか100分しか残っていなかった。

ロスト・バケーション : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

おもしれ~~~んよこれ。ある意味ワンシチュエーションで、風景も状況もずっと同じなのですが、ちゃんとスリリング。玉石混交の類語に「サメにナチス」がありますが、そんなこんなであまり期待せずに本作を観たので、予想外にめっちゃおもしろかった。ちゃんとサメで、ちゃんと絶望的。太平洋で漂流したり海底のケージに取り残されたりするのも恐いですが、すぐ目の前に陸があるのに行けないという焦れったさが、サメ映画にしては珍しい風味の美味にしています。ラストは若干アグレッシブすぎるきらいはありますが、そこをふくめても、全体的に秀作なサメ映画。サメってたまに当たりがあるからやめらんないのよ ジュラシックシャークの話はNO

 

『イントゥ・ザ・ストーム』

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観測のため荒れ狂う竜巻に立ち向かう「ストームチェイサー」と呼ばれるプロフェッショナルを中心に、直径3200メートルに及ぶ超巨大竜巻に直面した人々の姿を描いたディザスターパニックムービー。POV(主観映像)方式も取り入れた臨場感あふれる映像で、荒れ狂う竜巻に襲われたアメリカ中西部シルバートンの人々の壮絶な一日を描き出していく。

イントゥ・ザ・ストーム : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

ストームチェイサーという職を知ったのはクレイジージャーニーででしたが、そこで登場した青木豊さん(日本で唯一のストームチェイサーらしい)の竜巻を追う姿を見ていたので、本作のチェイサーたちは「映画とはいえ、やりすぎだろ!」という気持ちにさせられる。あまりにリアルだと映画映えしないので、仕方ないですが。竜巻が全てを破壊していく様はさながらモンスターのようで迫力は十分。いろいろ出てくる登場人物たちの人間模様は若干蛇足に感じたので、キャラクターを絞ってその人間模様を絡めながら竜巻にもっと焦点を当てたほうがパニック映画としてはより良かったかも。日本人にとって竜巻はそこまで馴染みがないですが、最近も大きな被害があったので、こういった映画を観ると「私の知らない種類の不幸に突然襲われる人が世の中にはたくさんいるんだな」と妙に不思議な気持ちになります。『クロール 凶暴領域』で「台風の影響でワニが街に出てきた」という設定を提示されたときの、あの不思議な感じ。ワニて。アメリカ。異文化。私の知らない種類の不幸。

 

『メッセージ』

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ある日、突如として地球上に降り立った巨大な球体型宇宙船。言語学者のルイーズは、謎の知的生命体との意思疎通をはかる役目を担うこととなり、“彼ら”が人類に何を伝えようとしているのかを探っていくのだが……。

メッセージ : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

「超常的なものに知恵で立ち向かう」という話が大好きなので(空想科学読本かなり好きでした)、私はかなりラブな種類の映画。宇宙人モノとしては派手な戦闘やグロテスクさがないので人によっては物足りないだろうし、「亜種」な映画ではあるのですが。
実際に宇宙人が人類の目の前に現れたとき、どうやって意思疎通をするのか。宇宙人が都合良くテレパシー機能を搭載している可能性はきっと低い。異文化との交流、そのための言語の習得、タブーの交換。超常性に対する現実性、そこに時空を超えるファンタジーが絡んで、たった1人の女の人生が地球規模に膨張して全てがない交ぜになるような映像体験が味わえます。
いわゆるSFとしては異色ぎみのものですが、私はどんぴしゃでした。

 

ヒトラーを殺す42の方法』

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アドルフ・ヒトラーの暗殺計画は単独犯のものから組織的なものも含め、少なくとも42あった。
初期の頃の暗殺計画は、銃撃や万年筆や花束の中に毒を潜ませるというものであったが、次第に警備が厳重になると巧妙なものになっていった。
家具職人、ゲオルク・エルザーが企てた暗殺計画は、演説会場の柱の中に時限爆弾を埋め込み、ヒトラーの演説中にタイマーで爆死させるというものだった。
他にも、ソ連やイギリスによる暗殺計画、身内の部下たちによる暗殺計画もあったのだが、ヒトラーは悪運に助けられてか生き延びることに・・・。

映画として観たら「映画か?」という感じなのですが、政治的啓蒙なども特に感じられないのですが、「ほ~当時いろんな手を使って暗殺しようとしたんだな~ええ、そんな手段いく?」という、物珍しい記録を見た満足感はあります。ダイジェストのように流れていくので、批判精神に則るのであれば、(ヒトラーに限らず)過去に起きた・起こしたあらゆる人災や過ちとも呼べるものを俯瞰的に流し観することで他人事感が生まれすぎてしまうきらいはありますが ……まあ啓蒙精神の作品はすでに多く存在しているので、いいでしょ ゆるく見られる映像集です

 

以上!あとは履歴や半券を見返しても「当時の感想、一切思い出せん……」となったのでわからん!
でもそういうなんの役にも立たねえしわたしの記憶にもさして残らねえ無数の映画や本や音楽がこの世にめ~~~~ちゃくちゃいっぱいあるから世界は成り立ってるし、人間は生きていけてるんだよな。わたしが感動しなかった映画がだれかの魂をちょびっとだけ支えていたりするんだよな。サイコ~~じゃん。おやすみ世界よい夢を。