2020年7月に観た映画を振り返る
なぜか精神的に終わっていて7月前半は全く映画を観られなかったので、実質半月ぶんの記録です。
全然コロナおさまんね~~~~~~~~~~~~~~
『アングスト 不安』
1980年にオーストリアで実際に起こった殺人鬼ベルナー・クニーセクによる一家惨殺事件を映画化した実録スリラー。83年にオーストリアで製作され、日本では88年に「鮮血と絶叫のメロディ 引き裂かれた夜」のタイトルでレンタル用VHSとして発売された作品を2020年に劇場初公開。刑務所出所後の殺人鬼が感じる不安、プレッシャーによる異様な行動や心理状態、それらを冷酷非情で凶暴なビジュアル、斬新なカメラワークで表現。陰惨な世界観を「U・ボート」「アンダーワールド」のアーウィン・レダー演じる殺人鬼のモノローグでつづっていく。音楽を元「タンジェリン・ドリーム」のクラウス・シュルツ、撮影をアカデミー短編アニメ賞を獲得した「タンゴ」やジョン・レノン、ミック・ジャガーなどのMVを手がけたズビグニェフ・リプチンスキが担当。監督は本作が唯一の監督作品となるジェラルド・カーグル。
邪悪。
いわゆる「ジャンル映画」好きであれば知らない人はいないであろう、話題の本作。
映画的には厳しいこの状況下でも公開から1週間以上経過してなお売り切れの相次ぐほどの、こぞって映画好きたちが観に行く本作でありますが、感想としては「映画として面白いわけではないがずっと邪悪な映像を見せられている」という感じ。本作は映画というより映像。
映画館の作品紹介頁に注意書きがなされるなどガンガンに上げられたハードルのせいか、とんでもなく最悪な映像がぶちかまされるのかと思いきや映像自体は「正直ムカデ人間2とかハウス・ジャック・ビルトのほうがイカれた映画ってかんじだけどなあ……」というもの。ただここで引き合いに出した2作はもちろん、この世で流通している映画の多くは当たり前だけどフィクションであり、フィクションであるゆえにそこに芸術性やロマンの存在する余裕がある。本作に芸術性やロマンの介在する隙間はない。ゆえにフィクション性というものがそこから欠け落ちていて、いわば「本当にイカれた男の殺人映像をひたすら見せられている」という気持ちになる。
イカれた男の殺人哲学というべきか、彼なりの「人殺しの理由」がずっと語られるが、それが論理性を宿していない様子や、彼の殺人計画が崩れていく様、ぐだぐだの人殺し、荒削りで洗練されていないカメラワークと演出、そういったものが全て生ぬるい湿度をまとって噎せ返るような「気色悪さ」を醸し出している。
とにかく気色悪い。人によってはこれを邪悪と呼ぶだろうし、人によってはこれを駄作と呼ぶだろう。そんな映像。
ちなみに劇場にて販売されていた「不安ドリンク」なるものを飲みましたが、それは美味しかったです。
不安で埋め尽くされた映画館 pic.twitter.com/rYkvEriVI0
— BUN太 (@bunbun9922S) 2020年7月17日
『透明人間』
「ソウ」シリーズの脚本家リー・ワネルが監督・脚本を手がけ、透明人間の恐怖をサスペンスフルに描いたサイコスリラー。富豪の天才科学者エイドリアンに束縛される生活を送るセシリアは、ある夜、計画的に脱出を図る。悲しみに暮れるエイドリアンは手首を切って自殺し、莫大な財産の一部を彼女に残す。しかし、セシリアは彼の死を疑っていた。やがて彼女の周囲で不可解な出来事が次々と起こり、命まで脅かされるように。見えない何かに襲われていることを証明しようとするセシリアだったが……。
予想以上に面白かったので観てください!!!以上です。
こんなに最初からネタバレしている映画も珍しい。予告編の時点で「夫が透明人間になれる仕組みを開発して、透明人間になり、主人公につきまとっている」ということを全て言ってしまっている。本当にそれだけの脚本。しかしそれが分かっていてなお面白い。
とにかく悪意が凄い。私は常々「人間のストーカーと取りついた幽霊、どっちがまだマシなんだろうか?」と考えるのですが、そして毎回答えが変わるのですが、この映画における透明人間(ホラー映画における幽霊、スリラーにおける殺人鬼、モンスターパニックにおける怪獣と位置付けられるもの)は人間と幽霊の悪いとこどりをした最悪の存在、悪意の概念そのものとなっているので、観ているだけでどっと精神が削られる。透明人間なんて存在を信じられない自分とそれしかありえないと考える自分、主人公が正気と狂気の狭間で悪意の糸から逃れれば逃れようとするほど悪化していく事態に、観客も主人公のように正気と狂気の狭間で苦しむこと間違いなし。
観ていると自然に「もう……もう勘弁して……」と言いたくなるほどの悪意の地獄が続く。
あとこれは一緒に観に行った友達と話していたことで、原題『you are NEXT』なのになぜか邦題が『サプライズ』となった『サプライズ』は「ぜってえ原題のほうが中身に沿ってるじゃん」と言われていて私もそれはまあもっともだなあと思っているのですが、この透明人間は『サプライズ』以上に『サプライズ』というタイトルが似合うなあと思いました。サプラーイズ……♡
『悪人伝』
凶悪なヤクザの組長チャン・ドンスが、ある夜何者かによってめった刺しにされた。奇跡的に一命をとりとめたドンスは、対立する組織の犯行を疑い、犯人捜しに動き出す。一方、警察サイドで捜査にあたるチョン刑事は暴力的な手段も辞さない荒くれ者として、署内でも問題刑事として知られていた。まだ世間の誰も気づいていない連続無差別殺人鬼がこの事件の犯人であると確信したチョン刑事は、その手がかりを求めてドンスにつきまとう。ドンスとチョン刑事は互いに敵意をむき出しにするが、狡猾な殺人鬼を突き止めるには互いの情報が必要であると悟り、共闘して犯人を追い詰めてゆく。
「極悪組長×不良刑事のタッグが連続殺人犯を追う韓国バイオレンス映画 」という時点で勝ちが確定している。
そしてもちろん勝利しました。圧倒的勝利。正直脚本がメチャクチャ優れているかと言われたらそこまでではないのですが(もちろん普通に面白いけど)、多少の脚本の粗をゴリゴリに潰していく暴力!暴力!!暴力!!!!暴力は全てを救う。バイオレンスイズジャスティス。
個人的には「明らかにカタギではない見た目のマ・ドンソクを刺す連続殺人犯」は「本当に誰でもいいんだな……」という通り魔の鏡みたいなイカレ野郎だなと思い好感度が上がりました。
マ・ドンソク演じる極悪組長も不良刑事も全然善人じゃなくて相手に対する慈悲とか情にほだされるとか全く無いのがとても良い。利害の一致。絶対このマ・ドンソクの部下にはなりたくない。本作により上司にしたくない韓国スター堂々の1位になったのでは?(非常に褒めています)
ちなみに劇場には「組長ドリンク」なるものが売られていましたが飲んでいません。
『WAR ウォー!!』
インドで大ヒットを記録したスパイアクション。国際的なイスラム教過激派テロリストを追ったインドの対外諜報機関RAWのナンバーワンの腕利きスパイ、カビールが味方の高官を射殺して逃亡した。RAWはカビールを抹殺することを決定。優秀な若手スナイパーのハリードがカビール抹殺のミッションに名乗りを挙げる。しかし、カビールはハリードの憧れの存在で、チームの指揮官と部下として数々の作戦を遂行した師のような人物でもあった。ハリードは任務遂行を固く決意するが、それでもカビールの起こした行動に疑問の気持ちを拭いきれないまま、カビールの行方を追う。
インド映画に外れなし、天才の映画!
すごく最高。「何が最高か」と言われたらわかんないんですけどとにかく最高。なんだかすごくいい。3時間弱と長い映画なので若干長いなあと思ったりはしますが退屈は感じさせない。なぜならずっと爆発と暴力と銃撃に画面が埋め尽くされているから。
「スパイ映画」という肩書に関しては「スパイかな……????」とはなりますが(なぜなら全員1ミリも隠密行動をする気はないので)、その代わりバイオレンスとバイオレンスで爆発を挟んだような最高のアクションが君を待っている!!!という感じ。ワイルドスピードのようなカーチェイスが見れるのもすごくいい。お得映画。
こういった全力でバカをやっている予算ガンガンのアクション映画にしては珍しく脚本もきちんと構成されていて、元は非常に取れます。もちろんインド映画なので、噎せ返るような色気の主人公2人によるダンスシーン(シリアスとシリアスの間にハイパーアッパーテンションのMVが挿入されます)も必見だ!
ここまで語彙がゼロだという自覚はあるのですが、語彙をゴリゴリに削ってきて直接心(ハート)に殴りかけてくる映画なので勘弁してください。
『リトル・ジョー』
幸せになる香りを放つ新種の植物「リトル・ジョー」を開発した研究者でシングルマザーのアリスは、ワーカホリックで息子のジョーときちんと向き合えていないことに罪悪感を抱きながら、日々の研究にいそしんでいた。息子のジョーへの贈り物として、彼女にとってもう1人の息子であるリトル・ジョーを自宅に持ち帰る。しかし、リトル・ジョーの香りを嗅いだジョーが奇妙な行動をとり、花粉を吸い込んだアリスの助手クリスもいつもとは違う様子を見せ始める。
奇妙で不思議でちょっと不気味な個性的な映画。この映画を何と形容したらいいか私は分からないけれど、「その花の花粉を吸いこむと幸せになれるが少し何かがおかしくなる」という、世にも奇妙な物語でありそうなとても奇妙な設定なのだけど、世にも奇妙なにあるような話との決定的な違いはその「かわいらしさ」。
主人公たちの着る白衣やロッカールームは愛らしいパステルグリーンで、みんなの食べているケーキも原宿にありそうな可愛い色合いをしている。肝心のそのお花もどことなくおもちゃのよう。その可愛くて不思議な世界観の中で、流れる音楽はなぜかものすごく日本っぽい。そのミスマッチさがさらに奇妙さを増していて、好きな人はすごく好きな世界観なのではないかなと思う。
特に山場があるわけでもなく奇妙なお話が淡々と進んでいくのだけど、私は画面作りも含めてとても心地よく感じたので、この監督の次の作品も観てみたいなと思いました!
あと犬死ぬんで気を付けてください!!!!!!!!私は予想してなかったから非常に悲しかった、こんな悲劇を繰り返してはならない……
『コンフィデンスマンJP プリンセス編』
(コンフィデンスマンJP プリンセス編 : 作品情報 - 映画.com)
世界有数の大富豪フウ家の当主レイモンドが他界した。10兆円とも言われる遺産をめぐりブリジット、クリストファー、アンドリューの3姉弟が火花を散らすが、執事トニーが相続人として発表したのは、誰もその存在を知らない隠し子ミシェルだった。世界中からミシェルを名乗る詐欺師たちが“伝説の島”ランカウイ島に集結する中、ダー子、ボクちゃん、リチャードの3人もフウ家に入り込み、華麗かつ大胆にコンゲームを仕かけるが……。
絶対に細かいことは考えちゃダメだゾ!!!コンフィデンスマンの世界へようこそ♡
ドラマから観ている人でこの作品に「緻密な脚本」を期待している人は1人もいないと思うので大丈夫だとは思いますが、今までの作品(ロマンス編含め)で一番ちょっと粗が気になったかな……とは思いました。が、そもそもこれがコンフィデンスマンの世界なので、これで良いのです。
普通に面白かったです。
7月もお疲れ様でした!!気づいたらもう真夏!!この不況下で年間休日130日・有休消化率100%・男性育休取得率100%のホワイト企業を「現場がないなら働く意味がねぇ」と退社した私(バイトを3日で飛びます)が就職できる日はくるのか!?8月も世間体と重圧に負けずに自由に生きちゃうゾッ 地球LOVE♡