現金満タン、ハイオクで。

サブカルチャーがだいすき。ツイッターの延長なので詳しくはツイッターを見てくれ。

2022年1月前半に観た映画の話をする

気づいたら新年あけましておめでとうございます。

 

 

『ただ悪より救いたまえ』

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凄腕の暗殺者インナムは引退前の最後の仕事として、日本のヤクザ・コレエダを殺害する。コレエダの義兄弟だった冷酷な殺し屋レイは復讐のためインナムを追い、関わった者たちを次々と手にかけていく。一方、インナムの元恋人は彼と別れた後にひそかに娘を産みタイで暮らしていたが、娘が誘拐され元恋人も殺されてしまう。初めて娘の存在を知ったインナムは、彼女を救うためタイへ急行。そしてレイもまた、インナムを追ってタイへとやって来る。2人の戦いは、タイの犯罪組織や警察も巻き込んだ壮大な抗争へと発展していく。

ただ悪より救いたまえ : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

映画『ただ悪より救いたまえ』オフィシャルサイト

何かと聞かれたら「いつものやつ」、そういう映画。以上だ!!

「そういうの」がほしくて観てみたらちゃんと「そういうの」が出てくる。一定のクオリティを保つ、もはや韓国お家芸とも言えるバイオレンスノワールもの。韓国映画の哀愁おじさん、必ず死ぬ。(相棒の若い男がいるときは別)

本当に上記の感想しか出てこないくらい「そういうの」なのですが、これはかなり褒め言葉で、アクション・バイオレンス・爆発・ストーリー、なにをとってもきちんと仕上げられていて、多少の脚本の粗は気にさせないバイオレンスノワール映画として十分なもの。
韓国のノワール映画の何が良いって、「ちゃんと汚い」ところ。
物理的な意味で、流れる血がべとべとして生ぬるそうに映し出されている。全体的な湿った汚い暴力的描写が完璧。(貶すわけでは決してないが)例えばハリウッド映画での暴力描写の平均値と比べると一線を画して明らかに汚くてうっすら気持ち悪くて妙に生々しい人肌の温度感がある、そういうバイオレンス。電車で知らない人と腕が触れあったときのゾッとする感じ、あれに似た生理的嫌悪を抱かせる、生ぬるい温度感。だいすきだ。

あとレイがピッタピタのGUCCIのインナー着てるのが「そういう人」というリアリティがあってかなり好きです。レイ、全然下手じゃないけど、めっちゃ「気持ちいい」と「なんかキモい」の境界線みたいなセックスの前戯しそう。伝わってほしい。

 

『アンテベラム』

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人気作家でもあるヴェロニカは、博士号を持つ社会学者としての顔も持ち、やさしい夫と幼い娘と幸せな毎日を送っていた。しかし、ある日、ニューオーリンズでの講演会を成功させ、友人たちとのディナーを楽しんだ直後、彼女の輝かしい日常は、矛盾をはらんだ悪夢の世界へと反転する。一方、アメリカ南部の広大なプランテーションの綿花畑で過酷な重労働を強いられている女性エデンは、ある悲劇をきっかけに仲間とともに脱走計画を実行するが……。

アンテベラム : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

https://antebellum-movie.jp/

『ゲットアウト』より強烈で、『アス』よりはエンタメ寄り。あらすじは読まずに観た方が絶対に楽しめるので、あらすじの書き方をミスっていると思う。脚本の転換部を書いちゃだめなのよ。
内容としては「ゲットアウトで、アスです!」という感じだし、作品情報を見た段階でどのような映画であるかは大体察しがつくかと思いますが、それにしても二重の意味でかなり強烈な作品。

ともすればブラックユーモアにもなりそうなくらい過激に誇張して設定された舞台装置と、それをあますことなく存分に使って披露される地獄。
あるいはまるで寓話のように物語は展開され、ありえない設定のありえない過激な舞台はめちゃくちゃに破壊されていく。
おそらくあえて、過ぎるほどの過剰な演出をしていますが、それでも日本人である私には「え、これって逆に大丈夫?アリなの?」と思ってしまう怒濤の後半戦。

でもこういった作品が作られて世に提示されてその存在を肯定されているということは、かつてこの過激で過剰な地獄は確実に実在していて、その地獄は未だに尾を引いているということなんだろうなあと、寓話のようにありえない設定を観ながら考えたり。
最後までずっと「アリなのかこれは、本国で逆にめちゃくちゃ批判されてないのか、」と思ってエンドロールを眺めていましたが、どう……なんですかね……実際……批判が一切ないのは怖いから賛否両論あってほしいとも思う。両論ありきでこういった演出をしていると思うので。

スリラーとしても秀逸。謎がバババッと種明かしされていく終盤はエンタメの快感があります。

(すこしネタバレのようになりますが)

農園で労働をさせられるエデンと裕福で活動家のヴェロニカ、当初は同一人物だとすぐには気付けなかったくらい、立場が異なるときの表情が全く違う。化粧や服装の差はもちろんあるけれど、ヴェロニカの都会的な表情とエデンの虐げられる者の表情が、たとえ同じ服装をしていても一見して分かるくらいに、明らかに異なっていて別人状態。役者ってすごいな。

 

『弟とアンドロイドと僕』

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孤独なロボット工学者・桐生薫は幼い頃からずっと、自分が存在している実感を抱けないまま生きてきた。そしてその不安を打ち消すため、彼は古い洋館で、自分そっくりな「もうひとりの僕」のアンドロイド開発に没頭している。そんな彼のもとに、ずっと会っていなかった腹違いの弟が訪ねてくる。寝たきりの父親や駅で出会った謎の少女など様々な者たちが交錯する中、桐生と「もうひとりの僕」の間には、ある計画があった。

弟とアンドロイドと僕 : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

弟とアンドロイドと僕 | キノシネマ kino cinéma 配給作品

トヨエツの演技がマジで良い~~~~~~~

阪本順治監督の「自身の人生観や思索の後が色濃く反映した禁断の問題作となっている」というだけあって、私小説的雰囲気の濃い作品。
難解!!というわけではないけど、主人公・桐生の存在のように、どこかつかみ所がなく頼りようのない雰囲気がすごくこちらを不安にさせてくる映画。

画面いっぱいの陰鬱な雰囲気と冒頭から結末まで一切止むことのない雨、かつての暖かく華やかな時代の記憶を残すことがいっそもの悲しさを加速させる古い洋館と医療器具、とにかく終始画面に漂う空気感が「誰かの死に際の走馬燈を一緒に見せられている」ような感覚にさせる。

私は観ていてなぜだか凄く悲しくなってしまって、真冬の夜の帰り道で心がぶわぶわと不安になっていました。はやく帰って布団にくるまりたいよ~~……となる映画(そうかな)

「私は何者か」「本当に私は『ここ』に『いる』のか」という問いは人間が人間であるときからずっとつきまとってきたもので、高名な哲学者から夜に眠れない思春期の子供までみんなその普遍的で不変的な問いに悩まされてきて、この映画は監督自身がその問いに対してひとつの踏ん切りをつけたくて作ったのかもしれない。

なので本作で提示される思想とひとつの結末は、受け入れがたい人もいるだろうとは思うけど。なんにせよトヨエツの演技はマジで良い。

(以下少しネタバレ)

 

で、例の少女の正体って結局何なのか。恐らく「正体」とか野暮ったいことを言ってはいけないと思うし、彼女が本当にラストで示唆されるようにアンドロイドなのかどうかは“本質的”にはどうでもよくて、「何者であるかもしれないし、何者でもないかもしれない」という存在でもただ抱きしめあうことはできる(他者とのふれあいをもってして、たとえ自己がどのようなものであれ、いまここで確かに存在は確立される。……かもしれない)という結論なんだろうか?と私は思っていますが。

個人的には、無垢な少女にメッセージ性が託される形式に飽いているのも本音ではありますが。いい加減、2022年にもなってそういうのってどうなの、だって毎回「少女」じゃん、神聖さと透明性を見出されるのはいつも「少女」じゃん…………という。そこにお腹いっぱいな感じがあるのでラストに少し思うところはありますが、でもトヨエツの演技がマジで良いし、陰鬱な雰囲気がすごくすきなので、不安な気持ちにさせられるところも含めて結構好みな映画でした。

にしても誰も傘ささなさすぎ。

 

『レイジング・ファイア』

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正義感あふれる警察官チョンは、麻薬組織の壊滅作戦中に謎の仮面をかぶった集団に襲撃され、仲間を殺されてしまう。やがてチョンは、事件の黒幕が3年前に警察組織にはめられ投獄された元同僚ンゴウであることを知る。チョンは自身にとって弟子のような存在だったンゴウと、激しい攻防を繰り広げるが……。

レイジング・ファイア : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

映画『レイジング・ファイア』公式サイト

まだ1月ですが、おそらく「2022年いちばん映画館で観なきゃいけない映画」ことレイジングファイアッッ!!
(ちなみにこれは良い意味でも悪い意味でもです。)

ストーリーについて、深く考えてはいけない。ここ数年で観た映画で圧倒的にいちばん「サブキャラ・モブキャラに至るまでマジで誰にも共感できない映画」「めちゃくちゃストーリーが薄くて雑な映画」。正直だんだんイライラしてきてしまうくらい誰にも共感できずすごく雑。私は空腹時に観てしまったせいでこうなったのでしょうが、いらちの人間が観たらおおよそイライラしてしまうと思う(関西人)
これはまあ悪口といえば悪口になってしまうけれど、ところがアクションが変態級の仕上がりのため、逆に味が増す!!これで人間ドラマも重厚に描かれていたら濃厚こってり超ド級家系ラーメンみたいになって胃もたれ間違いなしだっただろうけど、人間ドラマが限りなく「最低限のやつを限界まで引き延ばしました」みたいな感じだから、アクションにものすごく集中できる。

アクションにリアリティは一切ない。なにもかもがありえない。そのありえないアクションが舐めるような画角で余すことなく映されて、なんかわからんけど変態みたいにヤバイ仕上がりになっている。映画館で観ろ、マジで!!!!映画館で観ないと魅力が半減しちゃうよ~~という映画は多くあるけれど、この映画は半減どころの騒ぎじゃないので。

(以下少しネタバレ)

特に最終戦。肉弾戦で相手の顔を掴んで机などに押しつけて横にズザザザッとスライドさせるアクションはよく観るけど、それをグランドピアノでやることによって音色を奏でているのが、凄かった。良い意味でかなり気持ち悪い。野蛮で血まみれな肉弾戦のなかで、美しくも悲鳴のようにも聞えるピアノの旋律が鳴り響き、次の瞬間には目つぶしというTHE野蛮さ。からのマリア像が倒れてきてピアノを壊して鍵盤が断末魔のようにッジャーーーーンと音を立てて、崩壊する。この一連がほんの10秒20秒で行われて、こういう「とんでもない固執を感じさせるヤバアクション」がずっと続いてる。やべーわ。これで人間ドラマを緻密に描かれたらカロリー高すぎて耐えられなかったから、この塩梅で良かったんだよ。

ちなみにエンドロールではほろりとしてしまいましたね。

 

ところでドニー・イェン、スーツの下にどうやってその筋肉を収納していたのか教えてほしい。質量保存の法則が効かない男?

 

『ドント・ルック・アップ』

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おちこぼれ気味の天文学者ランドール・ミンディ教授はある日、教え子の大学院生ケイトとともに、地球に衝突する恐れがある巨大彗星の存在を発見し、世界中の人々に迫りくる危機を知らせようと躍起になる。仲間の協力も得て、オーリアン大統領とその息子で大統領補佐官のジェイソンと対面する機会を得たり、陽気な朝のテレビ番組「デイリー・リップ」に出演するなどして、熱心に危機を訴えてまわる2人。しかし人類への警告は至難の業で、空回りしてばかり。そのうちに事態は思わぬ方向へと転がっていき……。

ドント・ルック・アップ : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

コミカルでシニカルでブラックで、変化球なのにどこかストレートな、終末譚。
地球が滅びるという局面になってもセレブのゴシップに夢中な人間たちと、全然清くも正しくもなければマッチョでもない主人公たちが必死に奔走する姿が、ブラックユーモアでシニカルながらもまっすぐで、わりと笑っては観ていられない。私もいざ地球に隕石がぶつかるとなっても、それより前澤社長のお金配りのほうが気になるし、ずるければ株とか買い占めてしまう気がする。

結局地球が滅亡しない地球滅亡ものに少々飽いてしまったところがあるので、ちゃんと地球が滅亡する終末譚、サイコーです。ブラックでユーモラスな大筋と、終盤の家族で囲む団らんに象徴されるような真摯さが溶けるように融合していて、おもしろおかしくなりすぎず、かといってしんどくなりすぎない、非常に良いバランスで成立している映画。私自身がオタクとして終末譚チックな二次創作をしがちな人間なので、ほんとうに、終末、サイコ~~~~~

ちなみに本作はネトフリ配信に先駆けて映画館で上映されたけど、展開のスピーディーさが非常にネット配信サービスらしいというか。やはり近年、「掴みが大事!前置きはいいからさっさと始めるぞ!!」という序盤の映画がかなり増えた印象。冗長だとスキップされちゃうからねえ。

 

『コンフィデンスマンJP 英雄編』

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かつて悪しき富豪たちから美術品を騙し取り、貧しい人々に分け与えた「ツチノコ」という名の英雄がいた。それ以来、当代随一の腕を持つコンフィデンスマンが受け継いできた「ツチノコ」の称号をかけ、ダー子、ボクちゃん、リチャードの3人がついに激突することに。地中海に浮かぶマルタ島の首都で、街全体が世界遺産に登録されているバレッタへやって来た彼らは、マフィアが所有する幻の古代ギリシャ彫刻「踊るビーナス」を手に入れるべく、それぞれの方法でターゲットに接近。そんな彼らに、警察やインターポールの捜査の手が迫る。

コンフィデンスマンJP 英雄編 : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

映画『コンフィデンスマンJP 英雄編』公式サイト

相変わらずコンフィデンスマンJPな映画です。それ以外の感想は、とくに、なし。

緻密に計算された脚本を求めている人間はそもそもコンフィデンスマンJPを観ないと思うので、このちょっと粗っぽくて大味でやたらスケールのでかい感じを楽しむのがこのシリーズの醍醐味。とはいえプリンセス編はさすがに雑すぎた印象があったので、本作はロマンス編くらいには持ち直していてくれてよかったです。まあめちゃくちゃ大味なんだけど、その雑把な感じを楽しみたくて観ているので。

赤星さんどんどん萌えキャラになっててかわいいね。なんだかんだで次回作もあったら観ちゃうよ。そういう妙な良さがあるよね、このシリーズは。

 

 

 

年末年始にかけてアマプラやネトフリで観られるおすすめ映画をフォロワーに色々教えてもらったにも関わらず、一度もサブスクを開きませんでした。惰性でYouTubeを開き、ずっと知らない社畜のモーニングルーティンとかを観ている。惰性。脳死
元々、映像という他者のペースで展開される媒体が苦手なので、オタクのくせにとんとアニメに縁がなく、本は読めても映画やドラマは見られない人間なのですが(とくに映画は長すぎる!)、それゆえ『映画館』という強制的にそれを観る他なにもできない空間・時間を金で買っています。が、近年それが顕著になっている。何も考えたくなくてとろけそう。たすけてーーーー

未体験ゾーンの映画たち しか人生に楽しみがないです