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これはナニ!?謎ゾンビ映画『デッド・ドント・ダイ』

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デッド・ドント・ダイ : 作品情報 - 映画.com

アメリカの田舎町センターヴィルにある警察署に勤務するロバートソン署長とピーターソン巡査、モリソン巡査は、他愛のない住人のトラブルの対応に日々追われていた。しかし、ダイナーで起こった変死事件から事態は一変。墓場から死者が次々とよみがえり、ゾンビが町にあふれかえってしまう。3人は日本刀を片手に救世主のごとく現れた葬儀屋のゼルダとともにゾンビたちと対峙していくが……。

以下ネタバレ含むあらすじ(私訳)

主人公?の田舎のおじいちゃん署長クリフと巡査ロニー。最近町では変なことばかり。なんだか日照時間がおかしい。最近政府と大企業による南極開発がすすめられていて、そのせいで地球の軸が歪み、地球におかしな影響が出ている可能性があるとマスコミは報じる。ロニーは口癖のように「まずい結末になる」と言う。

二人は森で暮らす世捨て人やレイシストの農夫、ホラー好きのオタク、出自不明のエルフみたいな金髪で仏像の前で真剣で居合をする謎ジャパニーズエッセンスの葬儀屋の女などの個性豊かなメンバーのいる町で巡回をしていたが、ある日、街のダイナーでゾンビに食われたような死体が見つかる。ロニー曰く「ゾンビだ」。クリフはそれを一蹴したが、やがてゾンビの存在を信じるように。

そしてある晩ゾンビが町に溢れてゾンビパニックが起こる。ゾンビは生前の記憶を少し残し、生前ゆかりのあった地へ集まる。あるゾンビはコーヒーを求めダイナーへ、あるゾンビはお菓子を求め、ゲームを求め、服を求め、酒を求め……。

ロニーの「頭を殺れ」を合言葉に警察署に立てこもっていた二人ともう一人の女警官だったが、そこへ例の謎ジャパニーズエルフ葬儀屋女主人が日本刀片手に涼やかにゾンビの首を吹っ飛ばしながら現れる。三人は謎ジャパニーズエルフ葬儀屋女主人を警察署に残しパトカーで巡回に出かけ、あらゆる場所で見知った顔のゾンビを見る。終始彼らの会話と行動はシュールに進む。ゾンビに囲まれてる町の住人を見ても助けない。いや助けろよ。きみたち警官やぞ。

一方その頃警察署に残った謎ジャパニーズエルフ葬儀屋女主人はPC画面いっぱいに謎言語を打ち込む。

とうとう墓地でゾンビに囲まれ立ち往生した三人。やがて女警官は気が狂って外に飛び出して食われる。残されたクリフとロニー。クリフはロニーの言う「まずい結末」が気にかかり激しく問い詰めると、ロニー曰く「もらった台本にそう書いてあった」。そのメタメタな発言にクリフは「俺は自分の出演部分しか知らなかった」と言う。

そこに現れた謎ジャパニーズエルフ葬儀屋女主人。なんと現れた巨大UFOに乗って空に飛び去ってしまう(なおゾンビはそのまま)。唖然とする二人はやがて「どうせ最悪の結末になるなら派手にいこうぜ」みたいなことを言い、パトカーを出、ゾンビ軍団相手に奮闘するも囲まれて食われて死ぬ。

それをずっと見ていた森の世捨て人は「ゾンビは物質主義の成れの果てだ」的なことを長々と独白しエンド。

 

最後まで意味不明のトンチキ映画。ナニコレ!!!!!!!??????

 

とりあえず最初に褒めておきますが、このゾンビは歩きます。走らないしアクションしません。やった~~~~~!!!!


さてこの映画ではゾンビが突然現れてビックリするホラー演出は一ッッッ切なし。目立ったアクションやコメディもなし。ねえナニコレ!!!!!!!

一応触れ込みは「奇想天外なオンリーワンのゾンビコメディ」だったので、私は『ショーンオブザデッド』をさらにシュールにしたやつを想像して行ったのですが、想像をはるかに超えるシュールさ。これは何?


ゾンビとのバトルシーンはほぼないので、バイオハザードシリーズのように脚本ガン無視戦闘アクション全振りというわけではない。

ゾンビより実は人間がこわいんだよ、社会はやばいよ、というノリでもないので、『28日後……』のようにヒューマンサスペンス全振りでもない。

かといって、少しコメディチックな場面はあるものの一貫してシュールでまったりした雰囲気が漂っているので、『ショーン・オブ・ザ・デッド』や『ゾンビランド』のようなコメディ全振りでもない。

一貫して独特の雰囲気が漂っているけれども、例えば『アナと世界の終わり』のようにミュージカル調にしたり、そういう目新しさがあるわけでもない。

しかし正統派では決してない。

(上記のようにカテゴライズすること自体のナンセンスさは置いとくとして、一般論です)

……というように、「や……これは何…………????(スペキャ顔)」が2時間続く稀有な映画なのだけど、トンチキならトンチキとして楽しめるかと言われたらそうとも言い難い。例えばオモシロトンチキ映画といえばサメ系だとか、アイアンスカイとか、まあ色々あるけども。そういうわけではない。

ただ別につまらないわけでもない。でも面白いとも思わない。でも凪の状態ではなく何かの感情を抱いてはいる。もしかしたら人はこの感情を「つまらない」と名付けるかもしれないし、「斬新で意外と面白い」と名付けるかもしれない。そんな複雑な感情を抱かされるので、もしやこれはゾンビ映画界の『ザ・ルーム』になるのでは??と一瞬思ったりもしたけど、そうではないかもしれない。

 

一応巨匠がね、作った映画なので、なんかこう……評価しないと「分かってない」みたいな風潮がね、あるけれども。いやでも……さ、こう……なんか……最後まで「結局これはどういうテンションで見ればいいの??」とスタンスに迷ってしまった。そこが私の敗因かもしれない。もう一度スタンスを固めたうえで見れば楽しめるのかもしれないけれども。けれども!

正直真っ先に抱いた感情としては「これTOHOでやるんだ……」だった。いやこういうの第七藝術劇場とかでやってそうだし(第七藝術劇場を下げてるわけではないです、好きなので)、よくてテアトル系列っぽいし(テアトルを下げてるわけではないです、好きなので)…………。


終盤のゾンビは物質主義のメタファー的な流れで「なるほど皮肉ったブラックコメディがやりたいんだな」と実感したけど(オーラ消失の話とかも関係あるのかもしれないけどベンヤミン等に関して浅学なのでそもそもここら辺のオチをちゃんと解説することは出来ないんだけど)、それならそうで『キャビン』みたいに振り切ってくれませんか!!!!!!キャビンは名作!!!!!!!
もしかしたらスターウォーズを観たらもう少し楽しめたかもしれないと友達は言っていたけれど、スターウォーズ知識ゼロオブゼロの私はスターウォーズのパロディ箇所が多いことにすら気付かなくて、「なんやこの謎ジャパニーズ演出は???」「なんで急にスターウォーズの話してんねん????」と首を傾げるなどしていました。あれスターウォーズのパロディなんですね。なるほどなるほど。いや全世界の人間がスターウォーズ観てると思わないで~~~~~~私はディズニーもジブリも観たことない女なの~~~~~~幼少期に観てたアニメ、アンパンマンの次はもうブラックジャックに飛んでましたし………………あと名探偵コナン犬夜叉新世紀エヴァンゲリオン……

とりあえずUFOのあたりで「巻き返しキタ!!!????」と期待した気持ちを返してほしい。エイリアン出てきて地球を征服したら多分褒めてた。トンチキB級映画大好きなのでラストでエイリアン出てきてゾンビを率いて地球を焼き払ってたらそれはそれでアリ。

と書いたけれども「皮肉ったブラックコメディ」というスタンスも正しくはないかもしれない。ゾンビが歩いている時点でゾンビの原点回帰をしてそのうえでジャンル映画としてのゾンビの存在を再度とらえ直そうとしているようにも、見える。たぶん。それならあえてのメタとかあえての謎UFOとかにも納得がいくかも、しれない。たぶん。

 

という……このなんとも言えない妙な興奮を伝えたくてエントリを書きましたが、まあまだ公開しているので観てみてください。つまらないわけではないので……多分……。

「サメとゾンビに外れはない」と豪語しシャークネードを掲げていた私でしたが、今後「サメとゾンビにもたまに外れっつーかなんとも言えんやつはある」を唱え、「猿も木から落ちる」的な類語として使っていきたいと思います。

 

結局のところこの「どういうスタンスで見るのが正解なのか」「つ~~~かこれは何!!??」となるのが正解で、こういうモヤモヤふわふわユラユラした感覚こそが「奇想天外なオンリーワン」なのだとしたら、ジャンル映画としてそれを試みたのだとしたら、それは凄く成功した試みだったのではないかと思います。大衆ウケはぜって~~~しねぇけど!

なんて考えてしまうこと自体がジム・ジャームッシュの思惑のドツボにはまってるのかもしれないけど。

 

~~完~~